イケメン四天王が狙うのは誰だ? 資生堂「uno FOG BAR」のターゲットそれゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2009年09月09日 08時00分 公開
[金森努,Business Media 誠]
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イケメンはジェンダーを超える?

 Webサイト上には、一見男性向けであるこの商品が、女性が使用するとどんなスタイリングで使えるかというコンテンツがしっかり存在しているのである。

 この製品、メインターゲットは男性であろう。しかし、明確にサブターゲットとして女性を設定している、つまり「ターゲット2倍化作戦」をとっているのではないか。しっかりスタイルが決められて、しかも動きが出せて、何度でも直せるという製品特性は、確かに女性のスタイリングにも最適だ。

 女性自らが認知して、試して、購入するというパターンももちろんあるだろう。だが、それ以上に男性から、女性から、相互にオススメが発生するように設計がなされているのではないかというのが筆者の仮説だ。

 イケメン四天王のCMで男性、女性双方のAttentionを獲得しておく。そこにWebサイトで製品にInterestを持った男性から「これ、いいかも!」と紹介させるというコミュニケーション。オリジナルCM動画も「オレ、こんなの作ったから見てみて!」と男性から女性へアプローチさせるのにピッタリなツールとして仕掛けているとも考えられる。勧められた女性もCMで認知しているし、店頭で見てみれば、赤・白・水色と3タイプのきれいな商品パッケージは魅力的に映る。

 商品に触れたブログやネット上の書き込みでは、「“女性の方もどうぞ”とのことで私が使います」「POPを見て衝動買い。女性もいけそうです」などのコメントが寄せられており、女性たちの間にも浸透していることがうかがえる。

 反対に、イケメンたちのファンである女性たちは、「ブッキーや旬が使っているこれを彼氏にも使ってほしい」と、男性に勧めたり、強引にプレゼントしたりすることだろう。CMで商品を認知して気になっていた男性は、「そんなら使ってみるか。彼女も喜ぶし」となる。

 実際に妻夫木聡や小栗旬などのファンブログをのぞいてみると、「CMがかっこよくて買ってしまいました。彼氏にプレゼントしちゃいます」「これで息子も妻夫木君になれるかも」などと、女性→男性のコミュニケーションが駆動していることを確認できる。

 男性と女性の双方で話題になれば、コミュニケーションの効率は飛躍的に上がる。

 今回はワックスとは別の整髪剤を求めていた若い男性のニーズギャップを解消すべく生まれた商品だが、マーケティング部隊はそこでは止まらなかったのだろう。さらにターゲットを拡大することを考えた。「女性も取り込めれば、単純な話、最大でターゲットは2倍になる」と。

 「ターゲティング→ポジショニング→マーケティング・ミックス」と一通り完成させれば終わり、ではない。貪欲に、もっと狙えるターゲットはないかと考えること、そしてターゲットをいかに巻き込むか、コミュニケーションを細かく設計していくことの重要性を、資生堂マーケティングチームは教えてくれている。

 筆者も愛娘からプレゼントされたら、思わず使ってしまうだろう。「お父さんも旬くんみたいになって」って。いや、照れるな〜。髪をイケメンっぽくセットしたら、オリジナル動画を作って娘に送ってやろうか。

 新橋の片隅で妄想にふける筆者であった……。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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