地域みんなで使えるICカード「めぐりん」の挑戦神尾寿の時事日想・特別編(2/4 ページ)

» 2009年09月04日 11時17分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

加盟店が使いやすい参加しやすいスキーム

 具体的なサービスを見てみよう。めぐりんは総合CRMパッケージの「FeliCaポケット」をベースとして使っているため、複数の機能を持っているが、基本機能となるのは2つだ。

 1つは各加盟店での購入額に応じて付与される「めぐりんマイル」。いわゆるポイントサービスであるが、めぐりん加盟店すべてで使える地域共通ポイントの位置づけになっている。

 めぐりんマイルの特長は、加盟店の裁量権が大きいこと。付与率の基本レートは「100円=1マイル」だが、ボーナスマイルの付与や、マイルの特典交換の有無/内容などは加盟店が自由に設定できる。特定の決済手段に依存せず、加盟店の方針によって現金決済や電子マネー、クレジットカードなどあらゆる決済でマイル付与が可能だ。

 また、めぐりんカードの主体は「めぐりんWAON」だが、めぐりん加盟店になるために、WAON電子マネーの加盟店になる必要はない。WAON電子マネーにはWAONポイントというポイントサービスが用意されており、めぐりんWAONではこの“WAONポイントがもらえる”ことも1つのメリットになっている。しかし、めぐりん加盟店側でWAON電子マネーやWAONポイントの導入効果が薄いと判断すれば、「めぐりんの加盟店にはなるが、WAONの加盟店にはならない」といった選択も可能だ。加盟店は集客効果を考えながら、めぐりんマイルの内容やWAON電子マネー導入の是非を自由に決められるのだ。

 そして、もう1つが「めぐりんクーポン」である。こちらも各加盟店で使用できる共通のもので、めぐりんカードには最大10枚のクーポンを保存できる。クーポンはめぐりん加盟店で使用するごとに減るが、すべて使い切ったあとは、めぐりん事務局など各サービス拠点で無料でチャージできる。

 めぐりんクーポンの仕組みも、なかなかユニークだ。一般的な電子クーポンではあらかじめ交換商品やサービスが決まっていることが多いが、めぐりんクーポンは用途が設定されていない。めぐりんクーポンの1枚分で、どのような商品/サービスと交換するかは加盟店側が決められるのだ。お店側の原資は、クーポン1枚分として提供する割引や特典商品/サービスとなるので、こちらも集客効果を鑑みながら、店舗オーナーが自由に内容を決められる。

 各加盟店が設定するめぐりんクーポンの内容は、高松のタウン誌である「TJ かがわ」や、めぐりんのWebサイト「めぐりんナビ」で紹介されている。

 「めぐりんでは、お客様に多くのメリットを得ていただくだけでなく、地域の加盟店が無理せず参加できる仕組みを重視してサービスを設計しています。マイルやクーポンの内容を固定化せず、各加盟店が効果を考えながら原資負担を設定できるようにしているのはそのためです」(サイテックアイ社長の善正憲司氏)

イオン店内では、めぐりんWAONの販売コーナーや、タウン誌「TJかがわ」の配布用ラックが各所に並ぶ。これらを見ても、イオン側がめぐりんを通じた“地域連携”を重視し、積極的に支援していることが分かる。大規模SCは地域経済と対立しているという見方は、偏見かもしれない

 めぐりんマイルとクーポンという基本サービス以外にも、めぐりんには多くの機能が用意されている。各店舗からお買い得情報を配信する「メールマガジン配信サービス」や、加盟店の買い回りを促進する「スタンプラリーサービス」、そして各加盟店がオリジナルとして利用できる「会員証サービス」といった機能があり、これらはマイルやクーポン以上の集客効果を得たい加盟店が利用できる。めぐりんユーザーの利用履歴や買い回り履歴を分析した加盟店向けのコンサルティングサービスなどの導入も検討されているという。

 「めぐりんマイルとクーポンは基本サービスですが、会員証などは、めぐりん上でより効果的なCRMを構築したい加盟店様向けのサービスと位置づけています。これらのオプションサービスや分析レポートの販売、コンサルティング業務などが、めぐりん事務局のビジネスのひとつになっています」(イノベイト稲毛浩専務)

 めぐりん事務局では、年内の加盟店獲得目標を300店舗と見込んでおり、それに向けて会員の獲得と利用エリアの拡大を目指すという。

めぐりんカードをR/Wにかざし、すぐにおサイフケータイをかざすと、簡単操作でメールマガジン登録もできる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.