これまでの一風堂の歩みを振り返って、河原さんはこう表現する。
「僕は今までの一風堂は、時代感覚で言えば、1970〜80年代的な存在だと思うんですよ。団塊の世代の父親の背中を見て育った人たちが主要な客層になって支えてくださったと思います。しかし、時代は移ってきています。映画『Always 三丁目の夕日』のような1950年代から1960年代初頭にかけての時代を懐かしむ風潮が生まれていますよね。しかも、そうした昭和中期には生まれてもいなかった若い人たちが、そういう映画を楽しんでいるんです。
であるならば、そうした“2000年代の人々”へのメッセージを、これからは考えなくてはいけない。彼らは世代的に言うと、両親がいわゆるニューファミリー世代に当たり、子どもたちはバブル崩壊後の親たちの苦しみの姿を見てきた人々。DNAに刻まれている古き良き日本への郷愁が彼らの心にこみあげてきているのかもしれません。
そこで今年の秋、そうした1950〜60年代(昭和中期)をイメージした新しい業態をスタートします。一風堂よりも低価格のミドルマーケットを狙ったチャンポンのお店と、ラーメンのお店です。当時を彷彿させるリアルな温度感を大切にしつつも、味のインパクトは現代に即したものにしていきます。使用する野菜も肉も産地を指定するなど、現代の人々のニーズに応えます。
味のコンセプトですか? う〜ん、それは『洗練された品のない味』です(笑)」。河原さんの表情は、明るく優しく輝いていた。果たして、それはどんな商品なのだろうか? 今から楽しみなのは筆者だけではあるまい。(続く)
→ラーメン界をリードしてきた男は何を作ってきたのか? 「博多 一風堂」河原成美物語(前編)
→ニューヨーク店は成功……そして世界戦略の成算は? 「博多 一風堂」河原成美物語(後編)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
『2018年同じ笑顔で』(河原成美著、力の源カンパニー)
『一風堂の秘密』(河原成美著 経済界)
『風のつぶやき』(河原成美著 力の源カンパニー)
『一風堂 五輪の書』(河原成美著 致知出版社)
『一風堂心得帖』(河原成美著 力の源カンパニー)
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