手塚作品には“心”がある――3DCGアニメ映画『ATOM』制作者インタビュー(1/2 ページ)

» 2009年08月25日 07時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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 “漫画の神様”とも称される故手塚治虫氏。彼が生み出した数々の作品の中でも、最も人気のあるものの1つが『鉄腕アトム』だろう。日本初の国産テレビアニメとなったことでも知られる『鉄腕アトム』が、手塚治虫生誕80周年となる今年、ハリウッドで『ATOM』としてリメイクされる(日本では10月10日公開)。

 『ATOM』は、ロボットと人間が共存するメトロシティで、事故で命を落としまった少年トビーを、父親のテンマ博士が新型エネルギー“ブルー・コア”を使って最新型ロボット「アトム」としてよみがえらせる。しかし、生身の人間との違いからテンマ博士に疎まれたアトムは父の元を去る。そんな中、アトムの能力やブルー・コアを狙う者たちが現れ、望まない戦いに巻き込まれていく……という物語。

 『鉄腕アトム』は何度となくアニメ化されているが、今回の『ATOM』は3DCGで作られたアニメであることが特徴。その過程にはどういった経緯や困難があったのか、制作を担当したイマージでチーフクリエイティブオフィサーを務めるフランシス・カオ氏に尋ねた。

イマージのフランシス・カオ氏

手塚作品には“心”がある

――手塚治虫さんの作品にどういった印象を抱いていますか?

フランシス・カオ 私が一番感じたのは、「手塚さんの作品は“心”にフォーカスしているんだな」ということです。また、善や悪をはっきりとさせることなく、いいバランスをとって描いている。そういう意味ですごく真実に迫るものがあると感じています。

 『鉄腕アトム』以外にも手塚さんの作品では、『ジャングル大帝』『火の鳥』『ブラックジャック』などが好きですね。

――これまでの鉄腕アトムのアニメは2Dばかりでしたが、今回3Dで挑戦した理由は?

フランシス・カオ 私は2Dのアニメも好きなのですが、3DCGにすることによって、表情などをものすごく細かく描きこむことができるんですね。僕がアトムの何にひかれたかというと、ストーリーがすごく古典的だったということと、非常に心のこもった物語であるということです。3DCG化することで、そうした物語をより表情豊かに語れるようになるし、アクションもより盛り込めるようになるという点に注目しました。

(C)2009 Imagi Crystal Limited Original Manga (C) Tezuka Productions Co., Ltd.

――手塚プロダクションが監修に付いていますが、どのような関係で制作していたのですか?

フランシス・カオ 手塚プロダクションからはいろいろとコメントをいただきました。もちろんイマジ・スタジオ側からもフィードバックした部分があるのですが、そうしたやり取りに6カ月ほどかけて、新しいアトムのスタイルを作っていきました。日本の観客にも世界の観客にもアピールできるようなものを作っていくことがゴールだったので、「今までの複写ではいけない」というのが共通の認識となり、結構うまく協力できたと思っています。

 1つ面白い話があって、今回のアトムには歯が生えているんですね。手塚プロダクション側は、「何で歯が必要なんだ」と最初はビックリ仰天されました。原作では当然、歯は生えていないですからね。ただ3D画像だと、歯が生えていないと非常に不自然になるんですね。歯が生えていないバージョンも見せて、「ほら、変でしょ」みたいなやり取りをして、やっと納得してもらえたのですが、それが1つ印象に残りましたね。

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