コラム
» 2009年08月24日 08時31分 UPDATE

藤田正美の時事日想:U、V、それともW? 景気回復のシナリオは3つ

エコノミスト最新号のタイトルは“U, V or W for recovery”。景気が底を打ったのはほぼ確かなようだが、今後の回復はどのような形になるのであろうか、という記事だ。エコノミストではU字型、V字型、W字型を予想しているが、日本で話題になっているL字型はなかった。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 エコノミスト最新号(8月22日号)にこんな記事があった。タイトルは“U, V or W for recovery”。景気が底を打ったのはほぼ確かなようだが、今後の回復はどのような形になるのであろうか、という記事である。U字型、あるいはV字型か、あるいはW字型か。日本で話題になるL字型はない。そもそもLは景気が「底這い」であるから、回復ではないという屁理屈は別にして、世界全体で見れば、景気が回復しないということはないということなのだろうと思う。

景気回復を引っ張るアジアの新興経済国

 以下、エコノミスト誌の記事を紹介する。とりあえず現時点で景気回復を引っ張っているのは中国を初めとするアジアの新興経済国だ。例えば中国の第2四半期は、前期比で年率15%、韓国がほぼ10%、シンガポールが21%、インドネシアが5%(日本ですら3.7%だった)といった具合である。フランスやドイツはわずか1%前後とはいえ、やはり回復に転じた。米国では住宅市場の傾向が変わってきた(住宅相場が上がらないと消費が増えないとされているため、住宅市場の動向が注目されている)。

 さて問題は今後の景気回復はどのような形になるのかということだ。シナリオは主に3つ。

 V、U、Wである。V字型回復は、抑え込まれていた需要が一気に噴き出して力強く回復するというもの。U字型は弱々しくて、より緩やかな回復。W字型は数四半期は成長軌道に戻るもののやがて先細りになっていわゆる二番底をつけるという最悪のシナリオである。

 楽観論は言う。景気が急降下したのだから急上昇してもおかしくはない(株の格言に「山高蹴れば谷深し」というのがあるが、その逆で「谷深ければ山高し」ということか)。米国の戦後の景気を見ると、不況が厳しかったときはそのあとに力強い景気回復がやってきたという。例えば1981年から1982年の不況の後、GDP(国内総生産)成長率はほぼ6%に近かった。今回の景気後退はそのときよりも深く、長い(つまり、より力強く回復するはずだ)。

 その一方、悲観論は言う。そもそも今回の景気後退の原因を考えれば、景気回復の力は弱く、場合によっては二番底になる可能性が高い。第二次大戦後の金利上昇による典型的な景気後退とは違って、今回の不況をもたらしたのは金融破たんである。消費者は過重債務に喘いでいるし、金融システムにはまだほころびがある。その分、成長力は弱く、簡単に回復軌道から脱線する可能性もある。日本の1990年代の金融危機は10年間にわたって経済を停滞させ、1997年に早まって消費税を引き上げた結果、日本経済は景気後退に陥った。

 しかしこのどちらの例も正しいとは言えない。なぜなら、今回の世界的な不況はいくつかの景気悪化が重なっているし、政策的な対応も歴史的に例を見ないものであったからだ。これまで資産バブルが弾けると、バランスシート景気後退になった。借金して消費するという形は成り立たなくなった。それを増幅したのが世界金融システムの機能停止、マインドの急変、そして株価急落である。そして歴史上類を見ない政府の介入が行われた。景気回復がどの形になるのか、それはこうした要因がどのように相互に作用するかにかかっている。

将来が明るいと喜ぶのはまだ早そう

 短期的にはV字型の回復を示すこともあるだろう。景気刺激策が効果を発揮するし、在庫も減ってくるからである。アジアの新興経済国では貿易金融が再び動き始めたことで、株価が好転し、財政刺激策と相まって回復基調をもたらしている。今後数カ月は意外なほどの景気浮揚力が生まれる可能性もある。

 しかしこうした在庫調整の進展に伴う景気回復は一時的なものにしかすぎない。政府の景気刺激策にしても長続きはしない。この2つの要因を考えるだけでも、将来が明るいと喜ぶのはまだ早そうだ。米国の住宅市場ですら、差し押さえが増え、失業率の上昇が響き、住宅の購入者に対する税優遇措置がなくれなれば、再び低迷する可能性もある。

 景気が力強く回復するためには、政府による景気刺激策から個人消費へのバトンタッチがスムーズに行われることが必要だが、失業率が上昇しているドイツや日本でそうしたことが近いうちに起きるとは考えにくい。中国はまだ可能性があるが、通貨元の切り上げやいろいろな補助金の整理といった一連の改革がなければ、労働者の賃金を増やし、個人消費を促進することにはつながるまい。そうした状況になるまで世界経済はこれから数年間、底を這うような状態になる可能性が高い。

 エコノミスト誌は慎重派だ。二番底があるのかないのか、それがハッキリするのは今年の秋から冬にかけてということになるのだろうか。日本経済の状況は、おそらく政権を取るであろう民主党にとっても、かなり厳しいものになるはずだ。オバマ大統領は、昨年秋からの金融危機に対応するだけの時間もスタッフもあった。民主党の鳩山代表は、そのあたりの危機感をどれだけ持っているのか、はなはだ心許ないのだが、大丈夫だろうか。

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