世界最大の水産物市場、東京・築地市場。ここで古くから仲卸を営む大宗では、あることをきっかけに3つの理由で商品の配送に佐川急便の飛脚クール便を採用した。魚のプロから見た、飛脚クール便の魅力とは?
朝8時半、東京・築地市場場内。屋根があるとはいえ半屋外のような広い空間を、荷物を満載した荷車や自転車がひっきりなしに行き来する。ぼんやり立っていると、ターレー車(場内で使われるオート三輪)にはねられそうになるほどだ。
「朝からすごい活気ですね」と話しかけると「いや、セリは6時半には終わっているし、もうピークはとっくに過ぎてますよ」と笑うのは、築地場内に5店舗を構える、大宗(だいそう)の白田純一(はくたじゅんいち)社長。
築地市場は、日本全国から海産物が集まってくる、世界一大きな鮮魚マーケットだ。大宗は、その築地に約740軒ある仲卸(なかおろし)の1つで、築地市場場内に5店舗を構えて営業している。「仲卸」という言葉には少し説明が必要だろう。仲卸とは、築地市場など卸売市場の中で、卸売事業者から仕入れた商品を、市場内での売買に参加する権利がない小売事業者に販売する仕事である。
仲卸の仕事は大きく2つに分けられる。1つは、卸売事業者と複数の仲卸の間で行われる「セリ」、もう1つが卸売事業者と仲卸が1対1で行う「相対(あいたい)取引」だ。セリも相対も、そのポイントは「その魚にどれくらい価値があるか」を評価し、値付けするところにある。つまり築地の仲卸とは、全国から集まってくる海産物の価値を知り抜いた目利き、魚のプロフェッショナルなのである。
「現在、大宗で行っている業務は“築地の仲卸”という言葉から連想される仕事からは大きく離れていると思います」と白田社長は話す。
仲卸の伝統的な業務であるセリや相対、築地市場の店舗での小売事業者への魚の小売販売のほかにも、現在大宗ではさまざまな新しい業務を手がけているという。
その1つが、近年大手仲卸が取り組んでいる、都内の飲食店やスーパーなどへの魚介類の販売だ。このニーズは新鮮な魚を配送するだけでなく、魚の二次加工も依頼されるなど実に多様だという。「消費者のニーズが多様化してきたことにより、我々の仕事も大きく変わり、幅が広がってきています。魚にまつわることなら、魚のプロとして求められれば何でもします。例えば『スーパーの開店記念としてマグロの解体ショーをやりたい』と言われれば、社員を派遣して解体ショーをします。そうした中で我々の強みは、江戸時代から続く卸としての商品調達力と提案力です。特に、より安全で安心な天然モノのおすすめ商品を提案する力には自信を持っていますし、評価されています」
2009年6月、大宗は佐川急便の飛脚クール便を採用した。現在は佐川急便の物流ネットワークを使って、毎日1〜2トンの食材を送っている。築地市場にはもともと水産物の配送を専門に行う事業者がいるほか、他社宅配便事業者が高いシェアを持っていた。そんな中、後発である佐川急便の飛脚クール便を大宗が採用した理由を白田社長に聞いた。
「佐川急便の飛脚クール便を採用した理由は、大きく3つあります。1つは配送における品質が高いこと、2つ目は配送がスピーディーでしかも時間を指定できること、そして3つ目はきめ細かなサービスを提供してくれることです。どんなことに困っているのか、我々のニーズをしっかり聞いて、我々に適したサービスを提供してくれたところを評価しました」
詳しく紹介していこう。きっかけとなったのは、関東に約60店舗を構える、ある大手居酒屋チェーンからの依頼だった。「近年の和食ブームもあり、この居酒屋チェーンさんでも、鮮魚などの食材のニーズが高くなっていました。たくさんの種類の食材を、新鮮なままそれぞれの店舗へお届けすることが必要になります」
上述のように、飲食店やスーパーへの販売はニーズが非常に多様化している分野である。チェーン店へ販売する場合、本部へ食材を一括で納入し、本部が分けて各店舗へ配送するわけではない。大宗から直接、60ある各店舗へ、必要な魚介類を必要な分だけ送ることになる。刺身から干物、加工物まで、各店舗に届けるものはさまざまだ。しかも、大宗の強みは「天然モノを中心に、旬の魚を安く提供すること」。年間を通じての定番商品だけでなく、時期ごとに旬のものや、築地で安く仕入れられた良い魚を本部にFAXで提案し、採用されればその商品を加えるなど、届ける商品の内容や量は毎日めまぐるしく変化する。こうした提案が、居酒屋などでよく目にする「本日のおすすめ」の背景にあるのだ。
このような事情により、店舗ごとに必要とされる食材の種類・数・大きさは毎日変化することになる。こうした食材を、指定された時間の範囲内に高い品質を保って配送する――この“ニーズ”にサービスをカスタマイズして応えてくれたことが、佐川急便をパートナーに選んだ決め手となった、と白田社長は話す。扱う商品が鮮魚であるだけに、チェーン店への配送にあたり、大宗が評価したポイントが3つあったという。
1つ目は、冷凍・冷蔵ともに高い品質で商品を輸送できることだ(参照記事)。刺身用の魚を送ったのに、同梱した保冷材が溶け出したり、外気に触れて温まり傷んでしまうようなことがあってはならない。しかし飛脚クール便では、商品を受け取ってから届け先に配達するまで、徹底した温度管理を実現している。巨大な冷蔵庫であるクールセンター内での仕分け、冷蔵・冷凍品を常温品と混載せず、冷蔵庫・冷凍庫を備えた専用の車に積み込むなどして、輸送の全行程にわたって商品ごとの定温を守っている。
2つ目は、スピーディ、かつ指定した時間に配達できることだ。朝、築地を出た荷物は、当日の午後2〜4時の間には店舗に到着しなければならない。顧客である居酒屋の店舗が希望する時間に食材が到着していなくては、スタッフの入店時間などにも影響を及ぼし、効率的に開店準備を行うことができなくなるからだ。しかも配達完了時には配達報告が入るため、チェーン本部側でも、各店舗の状況を把握でき、安心感があるというメリットがある。
3つ目は、きめ細かいサービス。築地市場内には「茶屋」と呼ばれる配送センターがあり、ここから荷物が外へ運ばれていく。通常であれば、ここで配送先の住所を伝票に記入して張り付け、荷物をこん包して宅配便事業者に渡さなくてはならない。しかしこのスキームでは、佐川急便側で居酒屋チェーンの各店舗の住所を事前に入力した伝票を用意。箱ごとに対応する伝票を代行して張り付け、荷物を配送している。大宗側は、各店舗向けに仕分けした箱に簡単に店舗名を記しておくだけで、約60の店舗へ素早く荷物を送れるのだ。
「居酒屋さんやスーパーさんなどお客様のニーズが多様化するに従って、その時々で我々に求められることも変わってきています。これまでいろいろな配送事業者さんとお付き合いしてきましたが、我々の『こうしてほしい』という(宅配便事業者に対する)ニーズに対して、各種サービスを当社向けにカスタマイズし、柔軟に対応してくれたのが佐川急便だった。だから今回、パートナーに選んだのです。
全国に張りめぐらされた物流ネットワークを持っている佐川急便と組むことによって、今まで取りかかれなかったこともできるようになるでしょう。今後、さらにビジネスチャンスを拡大していきたいと思っています」
白田社長は、物流技術の発展が、鮮魚ビジネスを大きく変えていると話す。「生ものをスピーディに遠くまで運べるようになったことによって、これまで不可能だったことが可能になってきました。例えば、生産者と消費者の間が短くなることによって、海のない土地でもおいしい魚が食べられるようになりました。山陰・山陽地方には今でも生魚を届けられない地域があるのですが、これも物流の発展で今後解決するでしょう」
食卓に上るおいしい魚の向こうには、鮮度維持のための温度管理技術と、スピーディ、かつ、きめ細やかな物流サービスがある――築地市場の取材を通して、物流ネットワークの革新が、私たちの食生活を豊かにしていることがよく理解できた。
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提供:佐川急便株式会社
アイティメディア営業企画/制作:Business Media 誠 編集部/掲載内容有効期限:2009年9月24日