コラム
» 2009年08月12日 10時00分 UPDATE

上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」:砂の中に頭を入れているダチョウ……それがメディアの姿 (1/2)

ジャーナリスト・上杉隆氏と社会派ブロガー・ちきりんさんの対談もいよいよ最終回。ニューヨークタイムズの支局長は日本のメディアについて「砂の中に頭を入れているダチョウだ」と揶揄(やゆ)する。その意味とは……?

[土肥義則,Business Media 誠]

 全10回でお送りする、ジャーナリスト・上杉隆氏と社会派ブロガー・ちきりんさんの対談もいよいよ最終回。上杉氏とちきりんさんは日本のメディアについては、どのように考えているのだろうか?

数十年前に海外旅行をする日本人のよう

yd_ue811.jpg ジャーナリストの上杉隆氏

上杉 ニューヨークタイムズの支局長のハワード・フレンチ氏は、日本の記者クラブについてよくこう言っていました。「日本のメディアは砂の中に頭を入れているダチョウだ」と。自分たちは安全だと思っているかもしれないが、「このままでは死んでしまうぞ」という意味。砂の中に入れていると頭は安全かもしれないが、それ以外の部分は敵に襲われるかもしれない。また砂の中にずっと頭を入れていれば、やがて窒息するだけ。

ちきりん まさにその通りですね。それはメディアだけではなく、ほかの業界でも同じこと。例えば海外に輸出しているメーカーは、インテリぶったりしない。彼らは海外の企業と付き合う機会が多いので、視野が広い。一方、海外の企業と付き合いがない業界は「僕たちはインテリだよ」といった雰囲気を出そうとする(笑)。メーカーの人たちと比べ視野は狭いのに……。

上杉 日本のメディアは記者クラブがあるので、海外のジャーナリストと付き合うことが少ない。例えばゴルフのマスターズの取材に行くと、プレスセンターがある。そのプレスセンターに各国のメディアが混在しているのですが、日本だけブースで隔離されているのです。

 マスターズの取材には40人弱の日本人記者がいましたが、ほぼ全員、石川遼君に付いて回っていました。今田竜二さんや片山晋吾さんに付いて取材したのは僕だけ。しかし遼君は初日、2日目の調子が悪く、日本に帰っちゃった。そうすると今度は、調子の良かった片山晋吾さんのところに記者がやって来た。つまり多くの日本人記者はゴルフを取材しに来ているのではなく、日本人を取材しに来ているだけ。

ちきりん 大リーグの報道でもそう。イチローが今日、ヒット2本打ちました……とか言ってるけど、マリナーズが勝ったかどうか分からないときがある。

上杉 ゴルフの取材をしない記者ばかりなので、プレスセンターで隔離されてしまったのかもしれない。

ちきりん それって恥ずかしいことですよね。

上杉 確かに恥ずかしい……。だけど、そのことに気付いていないのは日本人記者だけかもしれません。

ちきりん 日本のメディアは世界トップクラスのプレーに興味がないのかもしれない。遼君に興味はあっても、トッププレイヤーに対する知的好奇心がないのかな? 

 日本という狭い世界で、ずっと一番を追いかけてきたメディアというのは、「世界は知らない人たちがたくさんいて恐い」と感じているのかも。その姿はまるで、数十年前に海外旅行をする日本人のよう。

上杉 日本ではエリートだと思っているメディアですが、実は遼君にたいした取材をしていない。「朝食は何を食べましたか?」とか聞いている。これはぶらさがり取材の弊害で、会話は内輪話ばかり。なので政治家、スポーツ選手を問わず、公式な記者会見の席で、上手に話せない人が多くなってしまう。

ちきりん 取材される側の人も少しずつ変わっていく必要があるのかも。そして、ぶらさがり取材をしている人たちに「なぜそんな質問をするんですか」と逆質問できるようになると、お互い鍛えられますよね。

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