全10回でお送りする、ジャーナリスト・上杉隆氏と社会派ブロガー・ちきりんさんの対談9回目。上杉氏とちきりんさんは「決まったことが大嫌い」という。例えば上杉氏はテレビ番組に出演する際、基本的に台本を読まない。打ち合わせもあまり出ない。生放送中のスタジオでは、VTRの内容を「否定してはいけない」といった空気があるのだが、ついつい番組の進行を“ひっくり返してやろう”という衝動にかられるそうだ。
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上杉 ちきりんさんと同様、僕も決まったことは嫌いですね。例えば生放送に出演する際、台本などがあってもほとんど読まない。事前の打ち合わせにも出ない。
ちきりん 打ち合わせが多いと言われているNHKの番組は、本当に芝居臭い。
上杉 僕の場合、生放送以外、基本的に出演を断っています。収録だと緊張感に欠けるし、同じことを何度も言わされることがあるので、あまり出たくありませんね。それからVTRにいい加減なコメンテーターがコメントをかぶせてくる。これには耐えられません。
ちきりん テレビ局で働いている人もサラリーマンなので、番組内容に起承転結を求めているのかもしれません。番組がぐっちゃぐちゃになってしまうと、責任問題になるかもしれないし。
上杉 テレビというのは本来、混乱したメディアであるはずなのに、きれいにまとめようまとめようとしているように感じますね。
『とくダネ!』に出演していると、司会の小倉智昭さんからコメントを求められます。だけど僕は、知らないことには「分かりません。興味がないので」とハッキリ言う。これまで「知りません」「分かりません」「興味がありません」と言うコメンテーターは、あまりいなかったようですね。なので僕が「分かりません」と言ったとき、小倉さんは最初はビックリしていたようだけど、あとで「上杉は面白い」と言って使ってくれるようになりました。
テレビを見ているだけでは分からないかもしれませんが、実は“見えない空気”が漂っているのです。例えばVTRを作っているディレクターの苦労を知っているので、そのVTRの内容を「否定してはいけない」といった空気があるのは確かです。でも僕もちきりんさんと同じように、騒ぎが好きだから、番組の進行がうまくいっていれば「ひっくり返してやろう」と思ってしまう(笑)。
ちきりん でもそのやり方が、視聴者に受けているのでは?
上杉 視聴者に受けるつもりでやってはいませんが、結果的に仕事は増えていっていますね。
ちきりん 視聴者もバカではないので、予定調和の番組に飽きているかもしれませんね。NHKは視聴料を取りながら、時間とお金をかけてくだらない番組ばかり作っている。そこに“空気を読まない”上杉さんのような人が現れると「そうそう」とヘンに共感してしまう(笑)。
テレビや新聞と違って、ネットの世界はぐちゃぐちゃ。だから既存メディアから離れていっている人は、ネットのぐちゃぐちゃ性に引かれているのかもしれません。ネットの世界ではあることに対し、よく分かっている人が書いている一方、まったくの素人も書いている。しかも誰が書いているのかも分からなかったりしますからね。
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