第12鉄 名古屋地下鉄めぐり杉山淳一の+R Style(2/4 ページ)

» 2009年08月08日 07時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 路線図の面白さは東京が一番だろう。次は大阪か。しかし、名古屋の地下鉄もなかなか面白い。名城線は環状線、東山線は地上区間があり、鶴舞線は両端で名鉄と相互乗り入れしている。桜通線は延伸計画があって、上飯田線は日本一短い地下鉄路線だ。今回はそんな名古屋の地下鉄をめぐろう。チケットは名古屋市交通局が販売する「ドニチエコきっぷ」。土曜・日曜と毎月8日に有効の一日乗車券だ。

名古屋の地下鉄路線図(名鉄犬山線・小牧線、あおなみ線、リニモ、ゆとりーとラインを含む)。名古屋市交通局のWebサイトより

 名古屋名物の味噌カツで腹ごしらえを済ませたら、まずは東山線で藤が丘へ。路線図では黄色で示されている。この路線は名古屋市営地下鉄で唯一、地上区間がある。名古屋駅から20分ほど乗ると一社駅。その先で電車は地上に顔を出し、一気に高架線へ上っていく。風景は大都市近郊によくある住宅密集地だが、大手私鉄の沿線より見晴らしがいいと思うはず。その理由は、線路のそばに電柱が並んでいないからだ。地下鉄東山線は第三軌条方式といって、電車の電力を線路脇の集電用レール(第三軌条)から取っている。そのため空中の架線は不要。だから電柱がないし、空を広く感じられる。ちなみに大阪の御堂筋線や東京の銀座線も第三軌条方式だ。この方式は架線集電式よりトンネル断面を小さくできるため、地下鉄の建設コストを節約できる。地上区間の開放感は「嬉しい副産物」だ。

 東山線の終点・藤が丘駅は、通称「リニモ」の始発駅でもある(参照記事)。日本で営業している唯一の磁気浮上式リニアモーターカーだ。もし時間にゆとりがあるならこちらも体験してみよう。この路線はいずれきちんと紹介させていただくとして、今回は地下鉄の旅に戻る。

東山線藤が丘駅(左)。東山線の見晴らしのいい「第三軌条式高架区間」(右)

上ったり降りたりしてみよう

 東山線を戻って、本山駅で名城線に乗り換える。名城線は2号線と4号線の2つの路線として建設され、2004年に両者を接続して環状運転が始まった。JR山手線、JR大阪環状線、都営地下鉄大江戸線に次ぐ環状路線だ。大阪も東京も列車の運転方向は「内回り」「外回り」と表記するが、名城線の方向表示は「右回り」「左回り」となっている。次に目指すは平安通駅だ。最短ルートで行くなら左回りの電車に乗ろう。地下鉄ならではの「シュルシュル感」を楽しみたいなら右回りで行こう。

 平安通駅から出発する上飯田線は総延長800メートルしかない。隣の上飯田駅が終点だ。日本でもっとも短い地下鉄路線であり、今後も延長する予定はない。なぜなら、この路線は名古屋鉄道小牧線を都心へ延伸するために作られたからだ。従って列車はすべて名鉄小牧線と相互乗り入れしている。車両は名鉄と名古屋市交通局の両方を使用する。どちらも比較的新しい電車で、運転台の後ろから前方を眺められる。従来の地下鉄は運転席の後ろの窓をすべてふさいでいた。その理由は、客室の明かりがフロントガラスに映り込んでしまうからだ。しかし、最近は濃いブロンズガラスを使って映り込みを防止する車両が増えている。運転席の真後ろが好きな鉄道ファンにとっては喜ばしい傾向だ。なるほど、ここから前方を眺めれば、闇の中から明るい駅が浮かび上がる。宇宙からステーションにドッキングする気分もこんな具合だろうか。なにかほっとする気分である。

上飯田線より撮影。トンネルを走るアングラ感がいい?(左)駅が見えるとほっとする(右)

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