コラム
» 2009年08月04日 07時00分 UPDATE

松田雅央の時事日想:カーシェアリングはクルマ社会の賢い知恵……有効利用するカギは? (1/3)

メルセデス、BMW、フォルクスワーゲンなど、ドイツの自動車メーカーを知らないという人は少ないだろう。しかしそんな“クルマ大国”でも最近ではカーシェアリングが注目されている。そこでドイツのカーシェアリング事情に迫った。

[松田雅央,Business Media 誠]

松田雅央(まつだまさひろ):ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ(http://www.umwelt.jp/)


 「クルマはドイツ人お気に入りの子ども」――。

 ドイツ人は半分冗談、半分本気でクルマを溺愛(できあい)する自分たちの性格をこう揶揄(やゆ)する。高級車は豊かさの証、そして自尊心を満たすステータスシンボルであり、確かに他の国と比べその傾向が強いように思う。

 高級車の代名詞といえばメルセデスだが、多くの若者にとって「メルセデスはおじさんのクルマ」でBMWの方が受けはいい。ポルシェはドイツでも別格の高級スポーツカー。中級車から高級車まで作るオペル、生産台数で世界のトップを争う大衆車のフォルクスワーゲン――。米国の自動車産業が没落した今、ドイツと日本は自動車生産の2大巨頭である。

 昨年来の世界不況の波をもろに食らった自動車関連企業は経営建て直しと再編に追われ、また長期的な燃料価格の上昇、急速に存在感を増すエコカーも加わり、クルマ社会のあり方そのものが劇的に変わりゆく気配を感じる。そんな時代に新たなクルマの利用法として注目されるのがカーシェアリングだ。もっとも、カーシェアリングが普及し始めたのは1980年代とされるから昨今の燃料価格高騰や世界不況が成長を後押ししたわけではなく、これまでは環境保全やよりよい街づくりの機運が背景にあった。

 今回は成長を続けるドイツのカーシェアリングをレポートしたい。

レンタカーとの違い

 カーシェアリングとは自家用車とカーレンタルの中間的な存在であり、筆者はよく「自家用車の共同利用」と表現する。自家用車のように1世帯(あるいは個人)で所有するのではなく、複数世帯で利用するのが基本形だ。さらに組織が大きくなりクルマの台数が数十台、利用者が数百人ともなれば管理運営のため事務所が置かれ専従の職員が雇われる。そうなると形態はレンタカーに近づくが、あくまで登録した会員が「我々のクルマ」という意識で共同利用する点が違う。

 また、多くのレンタカー会社が全国に事務所を配置し広域の利用(例えばフランクフルトで借りベルリンで返却する)を考えているのに対し、カーシェアリングは隣接する市町村程度の範囲を対象とし、日常的な利用に便利なよう街角や公共駐車場に車を配置する。全国的な広告が必要なレンタカーと異なり、カーシェアリングは巨額な広告費をかけない分、料金(月の会費+使用量に応じた料金)が安く抑えられるのも特徴だ。

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