露出計不良、その理由は……-コデラ的-Slow-Life-

» 2009年08月03日 00時00分 公開
[小寺信良,Business Media 誠]

 去る7月30日、OLYMPUS Penシリーズの生みの親であり、OMシリーズXAシリーズなど数多くの名機の設計を手がけた米谷美久氏が長逝された。謹んでご冥福をお祈りし、氏の手がけたカメラたちをこれからも愛用していきたいと思う。

 さて、預かりもののOLYMPUS Pen D3だが、症状は露出計が動かないというものである。使い方がよく分からなかった時に、「背面の押ボタンは何だろう」と押し続けていたところ、動かなくなったそうである。ということは最近まで動いていたということでもあり、そんなに大変なことでもなさそうである。

 →デラックスなPen、OLYMPUS Pen D3

 早速軍艦部から開けていく。唯一フィルムカウンターのカニ目ネジだけが逆ネジなので、それだけ気を付ければ、分解は難しくない。スイッチの接点不良だと目星を付けていたのだが、どうもスイッチの位置が穴から大きくズレている。たぶん押ボタンとスイッチの位置が合わず、うまく押せなかったようだ。

押しボタンとスイッチの位置がズレている

 肝心の露出計は、ファインダーと一体化されていた。これも2カ所のネジで留まっているだけなので簡単に外れる。さらに調べてみると、スイッチを固定しているネジ穴の、細くなっている部分から折れていた。端っこだけがかろうじてくっついている状態である。おそらく元気よくスイッチを押し込んでいるうちに、力に負けて折れてしまったものだろう。樹脂パーツなので、経年変化でもろくなっていたものと思われる。

露出計はファインダー部と一体化されている
スイッチの土台部分が折れていた

 スイッチ全体をいったん外して、接着剤で折れた部分を固定する。いざとなったら、スペーサーをかませてスイッチそのものを接着止めしてもいいかと考えたのだが、折れた部分もそれなりにうまくくっついたので、現状のままでいくことにした。

 真っ直ぐにスイッチが押されるように、固定位置を微調整して、ネジ止めした。おそらくネジ止めが緩んで斜めに押されると、土台に変な負荷がかかるということだろう。あとは古くなったモルトを張り替えて、一応の完成である。

そう簡単にはいかない

 露出計は分解したままでは動かなかったが、ユニット全体をきちんとネジ止めしたら動いた。マイナス側は結線されているが、プラス側はボディを使って通電しているらしく、ネジを通じて露出計に通電する仕組みのようである。スイッチとボタンの当たり具合を下から観察したかったのだが仕方がない。再度組み立て直して、露出計の動作チェックである。

 本物の露出計を見比べながら、メーターの振れ具合を確認する。すると、昼光でも7ぐらいしか振れず、全然適正値に達しないことが分かった。どうやら露出計そのものも、感度調整をする必要があるようだ。

 セレンであれば、感度調整用に可変抵抗が組み込まれているものだが、CdSは特性が安定しているためか、すべて固定抵抗で回路が組まれている。ここをバラしていくのも大変なので、メーター自身の感度で調整することにした。

 メーター脇のテープをはがすと、メーターの調整機構が見える。U字型の部分がそれで、この角度を調整することで、メーターの振れ具合を調整できるのである。

メーターの感度調整を行う

 昼光、暗部、室内などいろいろ条件を変えながら、露出計の振れ具合と合わせていく。何度か調整しなおして、どうにか納得する値に振れるようになった。

 ついでにフィルム感度を設定するリングの動きが硬かったので、バラしてみた。するとリング部分に軽いサビが発生して、ザラついているのが分かった。これをきれいにふきとり、少しグリスを付けて組み立て直した。 文字の汚れは、必殺の海藻パックできれいにする。

フィルム感度のリングも掃除して組み立て直す

 Penは元々構造が簡単なので、修理の易しいカメラである。シリーズ全体で1700万台も売れたので、もしかしたらみなさんの実家の押し入れに眠っているかもしれない。レンズのコーティングも良く、カビも少ないので、修理すればいまだに立派に写るものも少なくないだろう。

 この夏休み、実家の押し入れあたりを探してみてはいかがだろうか。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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