石原慎太郎、筑紫哲也、猪瀬直樹……彼らを批判したら、こんなことがあった上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」(2/3 ページ)

» 2009年07月31日 11時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

私は混乱Lover

上杉 ところで、ちきりんさんもブログでメディアのことを批判されていますよね。

ちきりん 今……新聞がなくなりそうで、面白い状況ですよね。私、自分のことを“混乱Lover”と呼んでいるんです。例えば政権を取るのは自民党でも民主党でもどちらでもよく、とにかく何かが混乱しているのが好き。なので私は混乱Lover(笑)。

 これまで新聞社には大きな既得権益があって、パワーが溢れていましたよね。その新聞社が今、崩れかけている。米国でもそうですけど、新聞には生き残る道が見えてきません。これから新聞が消えてしまう、といった状況が楽しくて楽しくて。

 ただ仕事柄、平日の朝刊だけ日本経済新聞を読むことにしています。昔は情報源が少なかったので、多くの人は世の中のことがよく分からなかったのでは。米国の情報についても、新聞以外ほとんどなかった。しかし今、米国の情報はネットで補えてしまう。

 小学生のころ新聞を1時間ほどかけて読んでいて、まさに新聞は私にとって“社会の窓”でした。ところが小学生でも、新聞が書かないこと……つまりタブーがあるということを分かっていました。でも新聞しかニュースソースがなく、仕方なく新聞を読んでいたんですね。今では新聞以外に価値あるメディアがあるということを、多くの人は気付いたのではないでしょうか。

「私は混乱Lover」という、ちきりんさん

上杉 僕も最近、新聞の宅配購読を止めました。必要であれば外で買うことができますし、速報性でいうとネットの方が早く読めます。またちきりんさんと同じ意見で、新聞が面白くない。

ちきりん 面白くないですよねえ。

上杉 もともと新聞は面白くなかったけれど、情報を取る方法が少なかったので、仕方なく読んでいただけ。政治のことを取材していても、現場で聞いたこと以上のことが、新聞では書かれていない。情報を整理するために新聞を読むことはあっても、積極的に情報を取るために読むことはない。

 あと各社によって、記事に“思惑”が入っているので「このネタについて読売新聞はこう書くのでは」と推測するんです。そして「やはり読売新聞はこう書いたか」といった確認作業には使いますね。

ちきりん 私は全国紙よりも、専門誌の方が面白いと思っています。例えば日経新聞よりも日経産業新聞のほうが、読んでいて楽しい。新聞は国際面からスポーツ面まで、いろいろなことを取りそろえてくれています。しかし取りそろえているということは、昔の“標準家庭”を想定しているのかもしれません。

 例えば役所の発表モノだと、親2人子ども2人といった標準世帯向けの数字が並んでいます。所得がいくらだとか、家計がどうなっているかだとか。しかしその標準世帯に当てはまる人が少なくなっていますよね。また大学を卒業し、一生懸命働いているサラリーマンに「これくらいは知っておいてくださいね」といった記事が多い。けど今の時代は、自分の興味があることについて、すごく詳しい人が増えてきているのではないでしょうか。

 アニメについてものすごく詳しい人は、アニメに特化したメディアに価値を見い出すでしょう。だけど新聞のように「AからZまでありますよ」といった、いわば“セレクトショップの手法”が時代に合わなくなってきているように思えます。

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