コラム
» 2009年07月30日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:あえて異議を唱えよう! 金太郎飴記事は“いらない” (1/2)

新聞やテレビなどで「同じトーンの記事が並んでいるなあ」と感じたことがある人も多いだろう。いわゆる“紋切り型”の報道だが、このままの状態が放置されれば、読者や視聴者をミスリードする可能性があるかもしれない。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

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1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載中。


 先の当コラムで、株式市況をめぐるメディア界の現状に触れた(関連記事)。“強気”のレクチャーを下敷きに、実際の景況感とズレた記事が相次いだ、という内容だった。今回は、最近筆者が懸念している“紋切り型”の報道に焦点を当てる。

 紋切り型とは、新聞・テレビがほぼ横一線で同じトーンの記事を並べ立てるという意味だ。このままの状態が放置されれば、読者や視聴者をミスリードする公算さえあると筆者は危惧している。

相次ぐ金太郎飴記事

 まず、筆者が気になったのが今年6月の記事、改正薬事法施行についてだ。同法の改正で、薬剤師に代わる登録販売者を置けば、スーパーやコンビニ各社は独自に大衆薬の販売が可能になった。

 この際、主要メディアの論調は概ね以下のような内容だった。「薬販売参入で、新たな収益源確保=大手スーパー」、「攻めるスーパー・コンビニ、守るドラッグストア」――。実際、一連の報道を受けてドラッグストア関連の株価は軒並み値を下げる展開を強いられた。

 だが、筆者の取材では違う答えが出てきた。スーパーやコンビニを展開する大手流通企業の多くは、以前から傘下にドラッグストアを保有し、巨大なショッピングセンター(SC)で薬の販売を手掛けている。今度の法改正では、SC内の薬売場が傘下の薬局からスーパーの敷地内に移ったに過ぎない。旧知のアナリスト数人に取材したところ「収益が良かったという話を聞いたことがない」との答えが返ってきた。つまり売場が変わっただけで、芳(かんば)しい成果は望めないという意味だった。

 コンビニにしても「販売スペースが手狭なうえに、普通のアルバイトよりも割高な登録販売者を雇うほどメリットがあるとは到底考えられない」と、懐疑的な見方が大勢を占めた。一方のドラッグストアはどうか。法改正により営業時間の規制が大幅に緩和された。元来、登録販売者の人材も豊富だ。「食品と薬品の並行販売店など新たな収益源を模索する企業は多く、むしろドラッグストアの方が法改正のメリットを享受する」との見方が根強かった。ちなみに、主要紙やテレビの報道でこうした見方を示している記事にはお目にかかる機会がなかった。

プリウスは儲かる商品なのか

 もう1つ、筆者が気にかけているのが、トヨタ自動車のハイブリッドカー、プリウスをめぐる報道だ。トヨタの最新テクノロジーを駆使した3代目プリウスは、発売前から過去に例を見ないほどの人気を集め、受注残高は20万台を優に超えた(関連記事)。エコ志向の高まりに政府の減税措置が重なり、異例の大ヒットにつながった。主要紙報道、あるいはテレビもこうした内容を一斉に伝えた。同時に、業績立て直しを迫られるトヨタの救世主になると力説していたのは記憶に新しい。

 だが、筆者は他のニュースコラムで全く別の角度からプリウスのヒットを分析した(関連リンク)。先代と比較した場合、新プリウスは実質的な値下げを施した。ハイブリッドカーは巨額の先行投資を経て生み出された商品であり、爆発的に売れて売上高自体は伸びても、果たしてどの程度利益を生んでいるのか。つまりどれだけ儲けに貢献しているのか――と、疑問を抱いていたからだ。アナリストや自動車メーカー関係者を取材した結果、プリウスが売れても、巨額の営業赤字を埋める役割を果たせるかどうか疑問視する向きが大半だった。

 加えて、同社の売れ筋かつ利幅の厚い車種からプリウスにシフトする顧客が増加傾向をたどり、プリウスが売れれば売れるほど同社の収益を圧迫する可能性があるとの専門家の見方も紹介した。一部在京紙の分析記事を除いて、筆者はこの手の斜に構えた視点からつづった記事にお目にかかっていないのだ。

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