優先順位をつける人は……仕事ができない?

» 2009年07月27日 07時00分 公開
[小倉広,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:小倉広(おぐら・ひろし)

株式会社フェイスホールディングス 代表取締役社長。

1965年新潟市生まれ。1988年青山学院大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。商品企画、編集記者を経て組織人事コンサルティング室課長。1999年度リクルート社年間最優秀コンサルタント。1999年ソースネクスト株式会社(現東証一部上場)取締役就任、同年常務取締役。


 「後でやろう」。そうやっていろんなものを後回しにし、結局やらずに今に至る……といったことはないだろうか?

 仕事ができる人は仕事に優先順位をつけない。世の中のセオリーとは違うオグラ流のセオリーをご紹介する。

仕事に優先順位をつけるな

 「皆さん、僕が昨日メールで送った『仕事に役立つ日経新聞記事』。もう読みましたか?」と朝礼で話す僕。サッと全員の手が挙がった。と書きたいところだが、実際は……パラ、パラ、パラ。15人ほどの手が五月雨のようにあがった。

 そしてそれがすべてだった。なんと残りの25人つまり当社の半数以上の社員が、僕の送った記事を読んでいなかったのだ。僕はその記事を引用してスピーチをしようと思っていたのだが、一気にやる気が失せた。当社の社員に話すべきはそれじゃない。それ以前の大切なことを教えてあげなくてはならないのだ。僕は話題を切り替えて、こう語りかけた。

 「仕事ができる人は、仕事に優先順位をつけないんだよ」。例えば、先ほどの「新聞記事」の一斉メール。もしも、日中の忙しいさなかにそれが届いたとしたら、あなたはそのメールをその場で読むだろうか? それとも、時間がある時に後で読むだろうか?

 いや、選択肢の設定が間違っていたので修正したい。あなたは、その場で読むだろうか? それとも「後で読もう、と言い訳し、結果的に一生読まずに放置するか?」のどちらだろうか?

 そう。「後でやろう」と後送りしたことは、ほとんどが実現されない。「来週から禁煙しよう」という人が、実際に禁煙に成功することはないのだ。上司から仕事を頼まれたなら。メールが届いたなら。偶然誰かと出会ったなら。新しいアイディアが思い浮かんだなら。そのタイミングを「運命」ととらえ、その場でそれを片付けることだ。

 中途半端に頭がいい人は、仕事に優先順位をつけ「やることリスト」をずらりと並べる。例えば、先ほどの「新聞記事を読む」も、おそらく彼のリストに追加されたことだろう。しかし、そのリストの最後尾に加えられたタスクはへたどり着く前に、あなたはさらに新たな「やること」を次々と追加し続けるだろう。そして「新聞記事を読む」タスクはまたさらに後方へと押しやられるのだ。

 つまり、最後尾の仕事は永遠に実行されない。仕事とは本来、そういうものなのだ。仕事ができる人は、メールを開いたら「後で」ではなく「その場で」返信を打つ。誰かと食事をしましょう、となったら「そのうち」ではなく「その場で」食事の日取りを決める。これが、仕事ができる人の行動パターンだ。

 本当に大切な仕事のほとんどは、締切がない。つまり「緊急」ではない。しかし「緊急でない重要事項」をどれだけ成し遂げたか、でその人の人生が決まる。

 「緊急事項」にばかり追われている人は、ストレスに押しつぶされ、自分の人生を自分でコントロールできないままに一生を終わるのだ。そうなりたくないのなら「緊急でない重要事項」に出会った時には、すぐその場でその仕事を片付けるべきだ。締切のない重要事項に日付を入れ、その場ですぐに処理してしまうのだ。そうすれば、あなたの未来は変わっていく。幸せな人生へと一歩ずつ近づいていくだろう。

 「仕事に優先順位をつけるな」。世の中のセオリーとは逆だが、1つの真理である。(小倉広)

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