デラックスなPen、OLYMPUS Pen D3-コデラ的-Slow-Life-

» 2009年07月27日 00時00分 公開
[小寺信良,Business Media 誠]

 OLYMPUS E-P1の発売以来、「Pen」シリーズに注目が集まっているようだ。1960年代を代表する大衆機と言っても過言ではないのが、OLYMPUS Penシリーズである。とは言っても、実際に昔Penを使っていたという人は少ないだろう。筆者でさえPenで撮られたことはあるが、撮ったことは近年までなかった。以前、Pen EEDを買ったことがあったが、写りがパッとしなかったので手放してしまったのだ。

 しかしE-P1に触発されて久しぶりにPenが触ってみたくなったので、前回に引き続き、友人の「すずまり」さん所有のPen D3の修理を引き受けることにした。

再び預かりもの、OLYMPUS Pen D3

 Penには複数の系列があるが、Dシリーズは大衆機から離れて、コンパクト高級機路線を歩んだラインアップだ。DはDeluxeのDなのである。オリンパスは1962年にPen Dを発売後、1964年にD2、1965年にD3をリリースした。D3は、デラックス路線の最終形というわけである。

 レンズはF.Zuiko 32mm/F1.7という明るいもので、Penシリーズとしては破格に大口径のレンズが使われている。35mm換算では、45mmぐらいだろうか。フォーカスは目測式で、フォーカスレバーには0.8m/1.2m/3m/無限遠と、4段階のクリックがある。

レンズはPenシリーズには珍しい大口径

 シャッタースピードは最速で500分の1秒。絞りは5枚羽根と、ハーフにしてはなかなかぜいたくな作りだ。Cds露出計が組み込まれているが、自動で連動はしない。なおCdSに関しては、この連載の2回目で解説しているので、参考にして欲しい。メーターの数字を読み取って、シャッタースピードと絞りを合わせるスタイルである。

上部に露出計のメーターが付いている

 軍艦部が上部に行くにしたがってゆっくりと絞られ、さらにその上に山型のファインダー部が乗るといったデザインは、Penの伝統的なスタイルである。シャッターボタンも円筒ではなく、バー状のものになっているのも、Penの特徴だ。そう言えばE-P1があんまりPenっぽくないのは、シャッターボタンが丸いからではないかという気もする。

小さな巨人

 底面のロック機構を回転させて、裏ぶたを下方向に引っ張ると、全体がスポッと抜ける。当時はすでに裏ぶたを蝶番で留めるスタイルが主流だったが、電池の入れ替えが楽なようにと考えたものだろう。

 電池ボックスは、フィルム巻き上げ軸の底にある。太陽電池の原型であるセレン素子は電源が不要だが、CdSは太陽電池ではなく光センサーなので、電源が必要なのである。当時の指定水銀電池はすでに世の中から消えて久しいが、LR44が1つあれば動くようである。

電池ボックスは、巻き上げ軸の中

 フィルムカウンターは、撮るごとに増えるのではなく、最初に撮影可能枚数をセットして、撮るごとに枚数が減っていく、減算式だ。これはおそらく、ハーフだとフィルム1本を一度に撮りきれず、しばらく放置するケースが多いからだろう。久しぶりに引っ張り出すと、何枚撮りのフィルムを入れたかは忘れているはずだ。今何枚撮ったかよりも、あと何枚撮れるのかのほうが重要だと考えたのだろう。

 露出は、被写体にカメラを向けて背面のボタンを押す。上部のメーターの数字を読み取ったら、絞りかシャッタースピードリングを回して、間にある小窓にメーターの数字が出るよう合わせる。あとは小窓の数字がずれないように両方のリングを同時に回して、好きなシャッター速度や絞り値に合わせるわけである。こうすることで、絞り優先にもシャッター優先にもできる。

 フィルム感度はASA400まで対応しているので、今でも十分に使えるカメラである。

小窓からのぞく数字を露出計の値に合わせる

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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