マックの朝コーヒーがなんと0円! 無料で配るその真意とは?(2/2 ページ)

» 2009年07月22日 07時00分 公開
[安部徹也,INSIGHT NOW!]
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 続いて2点目は、「クロスセリング」でついで買いの売り上げが見込まれる点だ。もちろん、コーヒーだけを注文する客も相当数に上るかもしれないが、中には無料のコーヒーだけでは申し訳ないということで、ハンバーガー類の注文をする人も多いはずだ。

 マーケティングでは、赤字覚悟の目玉商品を用意して多くのお客様に来店を促すロスリーダー価格政策が取られることがある。このロスリーダー価格政策を実施する際には、来店した顧客に目玉商品以外の利益率の高いほかの商品をあわせて購入してもらい、トータル的に利益を確保する粗利ミックスを実現することが成功の重要な鍵を握る。

 目玉商品だけを購入する顧客は“チェリーピッカー”と呼ばれるが、このチェリーピッカーだけが行列を成して押し寄せるようでは、企業側にとっては骨折り損のくたびれもうけになりかねない。その最悪のシナリオを避けるためにも、無料のコーヒーにあわせてほかの商品を買ってもらうことで、収益の帳尻を合わせることができる。

 そして最後の3点目は顧客の「返報性の原理」に期待することだ。通常、人は他人から何かを施してもらった時に、お返しをしなければならないという感情を持つ。これは心理学で「返報性の原理」と呼ばれ、ビジネスでもさまざまなシーンで活用されている。

 例えば、試食。試食は無料で食品を提供するプロモーション戦略であるが、販売員から直接食品を手渡されると、何だかその商品を買わなければいけない気持ちになったことはないだろうか? 昔から「一宿一飯の恩義」という言葉があるように、人は何かを施されると返さなければいけないという気持ちがわいてくるものなのだ。

 そこでコーヒーを無料で提供すれば、この「返報性の原理」が働いて、その場で何か商品を勧められれば購入したり、たとえ購入しなくても知り合いにマクドナルドの良い噂を流したりと、コスト以上のリターンが見込める可能性もある。

 いずれにしろ話題性の高いプロモーションだけに、ロッテリアなどの同業ばかりでなく、スターバックスなどのカフェ業界も戦々恐々としているに違いない。マクドナルド、恐るべしである……。(安部徹也)

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