コラム
» 2009年07月21日 18時02分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編:本田宗一郎は「尊敬すべき歴史上の人物」――ホンダ新社長 伊東孝紳氏が所信を表明 (1/3)

6月にホンダ新社長に就任した伊東孝紳氏。金融不況や若者のクルマ離れなど自動車業界には逆風が吹いているが、これからのホンダは何を目指してものづくりをしていくのだろうか。7月13日、伊東氏が所信を語った。

[神尾寿,Business Media 誠]

 本田技研工業(ホンダ)は7月13日、新たに代表取締役社長に就任した伊東孝紳(たかのぶ)氏の合同取材会を実施。今後のホンダの取り組みについて、新社長の所信を表明した。

 2008年9月のリーマンショック以降、自動車市場全体に逆風が吹く中でホンダはどのようなかじ取りをするのか。今回の時事日想は特別編として、伊東新社長のコメントをもとに、「新たなホンダ」について考えてみたい。

ah_sinsyatyo.jpg 伊東孝紳新社長とインサイト

F1よりも「環境性能」が重要な時代になっている

 「このような環境下だからこそ、ホンダらしさを強めていかなければならない」。伊東氏は談話の冒頭、そう強調した。

 昨年から続く金融不況と、その後の実体経済の緊縮で自動車市場はまさに“逆風のさなか”にあり、ホンダでも生産現場や販売戦略において難しいかじ取りが求められている。だからこそ、もう一度、社内外にホンダらしさを問いかけることを、伊東氏は行っているという。

 では、ホンダらしさとは何か。

 20世紀、その答えは比較的シンプルであった。本田宗一郎という偉大な創業者がおり、その薫陶を受け継ぐ経営幹部、そして象徴的なF1などモータースポーツへの取り組みが、20世紀的なホンダ像を作りあげていたからだ。

 しかし、伊東社長は本田宗一郎の薫陶を受けた世代ではなく、ホンダを取りまく環境も激変している。F1からも撤退した。誤解を恐れずに言えば、「モータースポーツのホンダ」というイメージは大きな曲がり角にあり、どのようにして「ホンダらしさ」を再構築できるかが、伊東新体制の課題になっている。

 「本田宗一郎の薫陶を受けているのか、と問われれば私は違う。直接、(本田宗一郎と)話したことは数回しかない。しかし、距離があったからこそ見えるものもある。私なりに本田宗一郎のイメージを構築している」(伊東氏)

 では、伊東氏の本田宗一郎像、そしてホンダらしさとは何なのか。伊東氏は言葉を続ける。

 「(ホンダについて)私なりの解釈を申しますと、ホンダは本田宗一郎が作った会社であり、彼の時代に大きく発展して礎を築いた。では、この本田宗一郎はどのような人物だったかというと、ほんとうに『人間くさい男』でありました。思いやりがあり、好奇心があって、そういう人間くさい人間(が大切だということ)を堅い言葉になおしたのが、ホンダの基本理念である『人間尊重』です。

 こういった人間くささ、人間らしさを、ホンダはもういちど重視しなければならない。商品、そして企業らしさにも(人間尊重の精神を)出していきたい。こういったことを、私は(多くの社員との)対話で伝えております」(伊東氏)

 モータースポーツのホンダ、F1のホンダというイメージも、ホンダという会社の一面ではあるが、それがすべてではない。その上で、伊東氏は今後のホンダにとって重要なテーマとして「環境重視」を明言した。

 「F1撤退は残念なことは残念ですが、今の時代でいうと、そんなにレースが(重要)ではない。少なくとも、今のF1などレースのあり方には疑問を持っている。今後のホンダらしさでいえば、『環境と性能』がマッチングするようなものがふさわしいと考えています。例えば、そういった(環境技術や環境性能が競える)レースやモータースポーツのあり方があるのならば、是非とも参加していきたい」(伊東氏)

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