インタビュー
» 2009年07月17日 08時00分 UPDATE

大事なのはコンテンツの魅力、紙かWebかではない――「LUXURY TV」岸田一郎氏に聞く (1/2)

『LEON』『zino』など数々の人気雑誌を創刊してきた岸田一郎氏が、動画サイト「LUXURY TV」をスタートした。「Web動画には可能性がある」「ちょいワル、モテは封印」と語るその真意とは。

[吉岡綾乃,Business Media 誠]
ay_kishida.jpg 「LUXURY TV」制作総指揮、岸田一郎氏

 プロッツは7月14日、動画を中心にラグジュアリー情報を発信するサイト「LUXURY TV」をスタートした(参照記事)。富裕層をターゲットとし、ファッション、クルマ、ゴルフなどなど、“ラグジュアリー”全般を扱う。

 LUXURY TVの制作総指揮であり、自らも多く動画に出演するなど、同サイトの“顔”が岸田一郎氏。パンツェッタ・ジローラモ氏をイメージキャラクターに据えた『LEON』、その姉妹誌で“艶女(アデージョ)”の語を流行らせた『NIKITA』、富裕層向け“ちょいワル”雑誌『ZINO』の創刊編集長だった人物だ。

 紙の雑誌の編集長としてキャリアを積んできた岸田氏だが、実は以前から富裕層向けWebサイトにチャレンジしており、ファッション誌のWeb展開がそうラクではないことはよく知っている(参照記事)。その岸田氏が、今あえて動画サイトを立ち上げた理由を聞いた。

紙かWebか、は問題ではない

――岸田一郎さんといえば、紙のファッション誌の編集長というイメージが強いと思います。今回、Web動画を中心に据えたサイトを始めた理由は何でしょうか。

岸田 (質問のように)紙かWebかという話になりがちだが、それは違うと思っている。大事なのはコンテンツのはず。雑誌かWebかというのは、「どう伝えるか」だけの違いだと思っている。

 「紙が恋しくないんですか?」とよく聞かれるけど、僕は紙やインクのにおいが好きで編集者になったんじゃない。面白いのは読者をわくわくさせるもの、コンテンツの影響力なんですよ。この思いはずっと変わっていない。今はいろいろな発信手段が出てきたのだから、紙という形にこだわる必要はないはずだ。スタイルが違うだけ。

――なぜ動画、それもWebなのでしょう。

岸田 2008年9月に立ち上げた(LUXURY TVの前身である)KISHIDA DAYSでも、僕は動画が大事だと思って、たくさん動画をやってきた。何と言っても、動画は圧倒的に分かりやすいから。ネット動画という手段が出てきたことで、伝えたいことをオンデマンドで伝えられるようになった。動画という手段は、すごく効率的でしょう?

――紙に比べて、ということですか?

岸田 紙はコストがつらいでしょう。しかも売れなかったら、回収して断裁までやるわけです。コスト的にもそうだし、こんな時代に「それってエコなの?」という思いもある。

 時間もそう。雑誌を作るには、編集者がまとめた原稿をデザイナーがレイアウトをするまで待って、それを2回校正して、印刷所に送って待って……とものすごく時間がかかる。

 でも、取材をして、パパッと編集して、翌日には載せられるということになれば、とても効率がいい。うちの編集部は今4人いるけど、内部で動画編集をしている。一部外注も使っているけど、とても小回りが利くし、速いですよ。

 今は総合誌が売れない時代で、クラスマガジン化が進んでますね。あるコンテンツが、Aさんにはすごく刺さるけど、Bさんにはまったく刺さらない。でも、そういう動画コンテンツはテレビにはなじまない。ラグジュアリーな情報を、日本全国あまねくおじいちゃんやおばあちゃんが観たいかっていったら、そんなことはないわけです。だからうちがやっているような動画は、Webで配信しよう、オンデマンドで、ということになる。Webはクラスマガジン的なものが作りやすい状況になってきている。

――ラグジュアリーなファッション誌だから、ということでしょうか。

岸田 出版社は印刷所ではない。コンテンツメーカーなんです。大事なのは、コンテンツ収集能力なのだから、それを紙じゃなくて他の方法で出していこうとするのは自然なことだと思う。

 雑誌だけじゃないでしょう。もっというと、新聞社だって同じじゃないかな? 新聞社の強みというのは、例えば記者クラブに入れるという利権だったり、記者を抱えていて取材力があったり、ということなわけで、今のあの紙の新聞という体裁が大切なわけじゃない。これからどういう形でコンテンツを出していったらいいか、それを見つけた会社が生き残れるんだと考えている。

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