NHKを1週間で左遷され……政治とメディアの世界を“いったりきたり”上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」(1/2 ページ)

» 2009年07月15日 14時14分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 永田町を中心に取材活動を続ける、ジャーナリスト・上杉隆氏、謎の社会派ブロガーのちきりんさん。メディアとネットの世界で注目される2人が、ジャーナリズムの問題点やブログのあり方について徹底的に語り合った。Business Media 誠でしか読めない対談を全10回にわたって連載する。

“汚くない秘書”の世界に

2002年よりフリージャーナリストとして活躍する上杉隆氏

ちきりん 上杉さんは、なぜジャーナリストになろうと思ったのですか?

上杉 僕がまだ小学生のころ『兼高かおる世界の旅』という番組があり、それを見て「いいなあ、世界旅行をしてみたいなあ」と思っていたんです。そして兼高さんの肩書きを見ると、「ジャーナリスト」と書かれていた。僕は単純なので「ジャーナリストというのは世界に行けるんだ!」と思い込んでしまい、小学校の卒業文集に「兼高かおるさんの2世になりたい」と書いたところ、先生に怒られてしまった(笑)。

 そのころから「ジャーナリストになりたい」という思いがあり、大学を卒業し、NHKに就職しました。そして研修を受けていたのですが、1週間後に「本社の渋谷に行け!」という命令が……。当時、本社に行くということは「俺って、偉くなったのかな!?」と思っていたのですが、実は「この新人は使えない。だから本社から出すな!」ということだった(笑)。

ちきりん 入社1週間で、“左遷”ですね(笑)

上杉 そしてテレビ番組『おはよう日本』の前身……『モーニングワイド』という番組で、校閲を担当していました。しかしその仕事をしていても、「取材に出たい。現場に行きたい」という思いが強くなるばかり。ある日、NHKの政治担当記者に相談したんです。「政治のインナーサークル(権力中枢部)を見てみたい」と。しかし、その人に「そんなの見られないよ」と言われてしまった。

 でも政治記者だったら見られますよね? と聞いたところ、その人はこう言いました。「政治記者でもインナーサークルは見れない。もし見たいのなら政治家になるか、政治家の秘書になるか、政党職員になるしかない」と。しかし僕は政治家になるつもりはなかったし、政党職員は暗い感じがした。また政治家の秘書は汚なそうなイメージがあった(笑)。でもその中で「どれがいいかなあ」と考えたとき、“汚くない秘書”ならいいのではないかと思ったんです。そして、“お金持ち”の鳩山邦夫事務所を紹介してもらいました(笑)。

ちきりん お金持ちの政治家であれば、賄賂(わいろ)などには関係ないだろう……ということですね。

上杉 鳩山邦夫事務所で面接を受けたとき、「君はどんな仕事をしたいのか?」と聞かれました。そこで僕は「またメディアの世界に戻るつもりなんですけど……」と正直に答えた。すると「君はスパイじゃないか!」と怒られてしまった(笑)。結局、面接で落とされ、鳩山邦夫事務所で働くことはできなかったのです。

ちきりん ハハハ。

上杉 その後、友人のツテを頼って、カラオケ屋の店長をしていたんです。すると鳩山邦夫事務所から「欠員が出たから、ウチの事務所に来ないか」との電話があった。1回目の失敗があったので、2度目の面接では「心を入れ替えました」ときっぱり(笑)。そして君はどこに行きたいの? と聞かれたので「山梨県の山名湖村です」と答えた。すると鳩山邦夫さんは「山名湖村?……そこは山梨県3区・堀内光雄先生との戦いか……厳しくなるな」と。そこで僕は「国会議員ではなくて、山名湖村の村長になりたいんです」と訂正したら、鳩山邦夫さんに「えっ、村長!? 君は志が低いなあ」と言われてしまった(笑)。

 当初、鳩山邦夫事務所では1年ほどで辞めるつもりでしたが、結局5年間働くことに。その間、辞表を12回提出したのですが、なかなか受理してもらえなかった。けど鳩山邦夫さんが東京都知事選に立候補したとき、「勝っても負けても事務所を辞めさせていただきます」とお願いしたところ、受け付けてもらえたのです。

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