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» 2009年07月13日 22時00分 UPDATE

-コデラ的-Slow-Life-:ハーフながらも高い描画力、Canon Dial35の実写

修理が終わったCanon Dial35。実際に写真を撮ってみると、長く愛されてきた理由が分かった。

[小寺信良,Business Media 誠]

 うまいこと電池の問題を解決できたDial35。さっそくCanonブランドの方で撮影してみた。

 →今もなお輝き続けるデザイン、Canon Dial35

 →モルトの腐食が始まっているDial35の中身

 →Canon Dial35の代用電池を作る

 実際にフレーミングしてみると、実にうまくボディが設計されているのが分かる。ゼンマイ部分を右手の小指と薬指が自然に握るようなデザインになっており、カメラを安定させている。シャッターは前面に付いているが、本体をつまむ感じで押すことになるので、手ブレが少ない。

 ボディ背面には黒いゴムが貼ってあるのだが、一部分だけ白く劣化している。なぜここだけ白くなるのかと思っていたのだが、実際に撮ってみて分かった。ちょうどその汚れ部分のところに、鼻が当たるのである。かつての使用者が過去何百回も鼻を押しつけてきたので、そこだけ鼻の脂でゴムが劣化したようだ。

 撮影は、シャッタースピードを決めれば絞りは自動で決まるので、やることはフォーカスだけである。とは言っても日中ならそこそこ自動で絞られるので、3点ゾーンフォーカスぐらいのつもりでピント合わせをすれば撮れるようだ。ファインダーが普通の横長なので、ハーフで撮っているという感じがあんまりない。

 ゼンマイによるフィルム巻き上げは快適で、このあたりの感覚はRICOH Auto Halfによく似ている。ただAUTO HALFはフォーカスすらもないので、使い勝手というか、撮るに当たっての気構えが全然違う。AUTO HALFはどちらかというと、本能で撮るタイプのカメラである。一方Dial35の場合は、どうやって撮ってやろうかと思案する「間」のようなものが発生する。

古さを感じさせない描画

 レンズはかなり小さいが、Demiシリーズとは別に設計されたものだという。ハーフで28ミリということは、35ミリ換算では40ミリぐらいに相当する。「一眼の標準レンズは50ミリ」と言われた時代に、ちょっとワイドに振ったというのは、やはり人物を入れ込んだスナップなどが撮りやすいようにということだろう。風景を撮るのもなかなかイイ感じだ。

ah_IMG_0023.jpg 昔の標準よりも少しワイドで、風景も撮りやすい
ah_IMG_0016.jpg 近景も構図が作りやすい画角

 周辺の光量落ちもほとんどなく、この時代のカメラにありがちなレトロな雰囲気はない。良く撮れるとは聞いていたのだが、ここまでいい描写だとは思わなかった。今回の修理で構造も分かったことだし、次は自分用にジャンクで探してもいいかもしれない。

ah_IMG_0021.jpg ハーフとは思えぬ描画力

 ただ当時の露出計では、逆光や背景が暗い場合の測光があまり上手にできないようで、絞り1段ぐらい飛び気味になるようだ。まあ、難しい場合はマニュアルで撮れ、ということなのだろう。シャッタースピードは固定したまま、マニュアルノブを引っ張って、ファインダー内で表示されたF値よりも暗めに設定すればいい。このあたりは、今のAEシフトの原型を見るようだ。

ah_IMG_0038.jpg スナップ撮りがいい感じ
ah_IMG_0037.jpg 難しい露出の時はちょっとオーバー目になる

 フィルムの巻き取りも、ゼンマイで行うことができる。ボディ横の「R」のノブを回すと、巻き取りが始まる。ただフィルム全部を巻き取るだけのパワーはないので、途中まで行ったら追加でゼンマイを巻いてやる必要がある。途中でうっかり裏ブタを開けてしまわないよう、気を付けなければならない。

 ゼンマイがなくても良く撮れるカメラには違いないが、やはりフルオートに挑んだ心意気と、構造上仕方がない部分をうまくデザインの中に生かしたアイデア、その内と外の挑戦が、Canon Dial35を長く愛される製品としたのだろう。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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