調理場から出る油も効率的に分解――NEDO、有用微生物を制御する新技術

» 2009年07月07日 15時41分 公開
[栗田昌宜,Business Media 誠]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月6日、名古屋工業大学と共同で微生物群を人為的に制御する技術(デザイン化技術)を開発、レストランなどの調理場から出る廃水に含まれている油を効率的に分解する実証試験に成功したと発表した。この技術を確立することで、微生物を利用した水質浄化や土質改良に広く応用することを目指すとしている。

 これまでにも廃水や廃棄物の処理に微生物は使われてきたが、多量のエネルギーを消費し、また、大量の廃棄物が出るというデメリットがあった。例えば廃水処理に要する電力は全国の総電力消費量の約1%、汚泥などの廃棄物は全産業廃棄物量の約2割を占めている。このため廃水・廃棄物処理の省エネルギー化が求められているが、従来の処理技術は雑多な微生物群をそのまま利用しているため高度な制御ができず、効率化することが困難だったという。

 このため同プロジェクトでは、微生物の構成や空間的な配置を人為的に操作して微生物コミュニティを制御するデザイン化技術を開発。この技術を応用して油脂分解有用微生物をデザイン化し、調理場の廃水に含まれる廃食用油を分離・回収する阻集器(グリーストラップ)で効率的に油脂を分解する技術を開発した。

 油脂分解技術では、油脂分解微生物群の中からグリーストラップ内の弱酸性の環境でも活動できる新規の油脂分解有用微生物2株(リパーゼ分泌細菌とグリセロール分解酵母)だけを抽出して利用する。なお、両微生物は共生関係にあり、混合培養することで油脂の分解速度や脂肪酸の消費速度が増すという。

 両微生物を混合培養した実験室レベルの装置では、流入させた調理場模擬廃水中の油脂および脂肪酸が24時間で完全に分解消失した。このため実証試験として実際のグリーストラップに両微生物と流出を防ぐための定着土台を投入して確かめたところ、グリーストラップ内での油脂の分解に成功した。

グリーストラップ内での油脂分解実証試験の結果(写真提供:名古屋工業大学 堀 克敏准教授)

 NEDOによると、有用微生物の共生による油脂の分解やグリーストラップ内に有用微生物を定着させる技術はこれまで報告例がなく、微生物をデザイン化した画期的な新技術だとしている。

 なおこの処理技術では、余剰汚泥や固体状油分などの廃棄物が排出されず、電力も消費しない。さらにグリーストラップ以外にも、食品工場などの大型油処理施設や清掃用の油脂分解洗剤など、他分野・新産業への拡大も期待できるという。

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