言葉で説明するのは非常に簡単だが、Sバーンとトラムの接続を実現するにはさまざまな問題を解決しなければならなかった。
たまたまカールスルーエのトラムの線路はドイツ鉄道と同じ広軌道なので線路の接続に問題はないが、列車は1万5000ボルトの交流電源で走りトラムは750ボルトの直流で走る。従ってカールスルーエモデルのSバーン車両は2つの電源システムで走れるよう特別開発されたものだ。またドイツ鉄道とトラムでは信号システム、安全管理システム、関連法規が異なるため運転手は両方の訓練を受け免許を取得しなければならない。
「問題は(比喩的に)1000ほどありましたが、それを1つ1つ解決しました」とはカールスルーエモデルを実現したAVG社長のコメントだ。
日本のローカル線同様、ドイツのローカル線も経営状況は厳しい。小規模の駅はほぼ例外なく無人化され、そういった駅舎の窓とドアはベニヤ板でふさがれている。駅舎には「売ります/貸します」の看板が掛けられているが、人気はあまりないようだ。駅が無人化すると落書きや汚れが増えて雰囲気が悪くなり、さらに乗客が減ってしまう。傾向として、不採算ローカル線の廃止は現在も続いている。
カールスルーエ市周辺のローカル線も例外ではなかったが、カールスルーエモデルのSバーンが走る路線はその悪循環から脱し、それが地域活性化に好影響を与えている。元々、Sバーン沿線には通勤・通学・買い物・余暇、週末は逆に市街地から郊外へ余暇目的の鉄道需要が存在していた。その多くは自家用車を利用していたわけだが、カールスルーエモデルの導入によりこれらの人々がSバーンを利用するようになった。新たな需要を生み出したというより、潜在的な需要をうまく掘り起こしたと言える。
もちろんカールスルーエモデル導入にはいくつかの条件があり、すべてのローカル線に適用できるわけではないが、アイデアとやる気、そして財政的な裏付け(これが大変なのだが……)があればローカル線の復興と地方都市活性化にまだまだチャンスが残されている。
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