相互乗り入れで便利になるかも? 鉄道とトラムの融合松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年07月07日 07時57分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

下駄履き気分で利用

 カールスルーエ市(HP)と、40キロほど離れた温泉保養地バーデン・バーデン(HP)を結ぶSバーンの路線「S4」(1990年代半ばに運行開始)を例にカールスルーエモデルの特徴を説明しよう。

 カールスルーエモデル導入以前、カールスルーエ市街地からバーデン・バーデンへ行くには、まずトラムでカールスルーエ中央駅まで行き、そこでドイツ鉄道に乗り換えていた。当然、乗り換えには時間と手間がかかり、しかも列車の運行は1時間に1本程度しかなく、終電も夜9時頃と不便だった。

 それがS4により乗り換えなしでバーデン・バーデンまで行けるようになり、便数も20分に1本と格段に多くなった。トラムの路線網は市街地を網の目のようにカバーし、100〜300メートルおきに停留所が設置されているから、自宅から数分歩けばいずれかの停留所に着く。S4の停留所があればそのままバーデン・バーデンに行けるし、Sバーンとトラムの乗車券は共通なので買い替えの手間もない。

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 S4は市街地の中をトラムのようにゆっくり走り、郊外に出てドイツ鉄道に乗り入れると今度は列車のように時速100キロ以上で快走する。

 視察に来たある日本人がカールスルーエモデルを評し「街から温泉まで下駄履きで行けるわけだ!」と言っていたが、これなど市民生活に密着したSバーンの使いやすさをうまく言い表している。

中央広場を走るSバーン。歩行者に注意しながら時速10キロ程度で走る
郊外を走るS4。最高時速は100キロを超える

利便性が利用者を呼ぶ

 なお、カールスルーエモデルにより便数を増やせるのは次のような理由による。

 列車に比べSバーンは一編成が短かいため少ない乗客にも柔軟に対応でき、便数も増やしやすい。つまり「1時間に1本、乗客300人を大編成の列車で輸送」していたものを「1時間に3本、乗客100人を小編成のSバーンで輸送」するわけだ。乗客としては当然、後者の方が都合いい。

 また大編成の列車は短い区間で停車と発車を繰り返すのに不向きだが、Sバーンはそれが可能であり、短い間隔で停留所を置くことができる。採算性の問題もあって駅を設置できなかった小さな町や村にも、Sバーンなら停留所の設置が可能になる。

 カールスルーエモデルの効果は絶大だ。S4の乗客数は一挙7倍に増加し、これに一番驚いたのが実はSバーンの運営会社AVG(HP)だった。乗客数が予想をはるかに上回ったため、乗客に「増便が可能になるまでは、なるべく自家用車を利用して下さい!」とアナウンスした逸話も残っている。

Sバーンの利用者

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