コラム
» 2009年07月02日 12時00分 UPDATE

新連載スタート! 相場英雄の時事日想:なぜ巨大メディアは赤字に陥ったのか? 真犯人はこの男たち (1/2)

リーマンショック以降、一般企業だけではなく巨大メディアも赤字に陥った。原因については、不況に伴う広告収入の落ち込みやネットの台頭による販売不振が直撃したと言われている。しかし赤字に陥った背景には、業界特有の“病根”があるのではないだろうか?

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載中。


 2008年秋の世界金融恐慌以降、一般企業だけでなくテレビや新聞、出版社と巨大メディア企業が相次いで巨額赤字を計上した。原因については、世界的な不況に伴う広告収入の落ち込み、インターネットの台頭による販売不振が直撃したというのが一般的な論調だが、筆者は声を大にしてこれを否定したい。巨額赤字の背後には、業界特有の病根があるからだ。大不況による業績悪化は、メディア界が抱える根深い問題を露呈させるきっかけになったにすぎない。

記者や編集者に経営はムリ

 いきなり最上段に構えて、業界を袈裟(けさ)切りしたのには理由がある。筆者は通信社の記者として長年取材を続け、金融や製造業、商社などさまざまな企業のトップと接する機会があった。いずれのトップたちも社内のみならず、世界中に目を向けて会社の舵(かじ)取りを担う、いわば経営のプロたちだった。現在も親交のある一部の経営者たちは、不況の中で懸命に陣頭指揮を執り、業績立て直しに向けて奮闘している。翻ってマスコミ業界はどうか。

 新聞やテレビなど報道記者の場合、自身のカバーする業界に細心の注意を払い、同業他社に先んじてネタを出す、すなわちスクープを放つことが至上命題だ。スクープのために家庭生活を犠牲にし、1日中同業他社の動きに神経を尖らす。ネタを取ることが万事であり、それ以外の仕事に関しては全く素人なのだ。

 お叱りを承知の上で指摘させてもらうと、こうした人種は記者以外の業務は全くの素人であり、キャップと呼ばれる幹部職の記者がマネージできるのはせいぜいで10人規模の記者クラブまで。一般事業会社のように営業、財務の知識があるわけでもなく、これらの最低限の素養を持ち合わせていなければトップに就けないというごくごく一般的な社会常識は、マスコミには当てはまらない。これこそが業界全体を覆う業績不振の真犯人に他ならない。

 出版社もテレビも同じ様な仕組みだ。編集者ならばベストセラーを世に送り出すべく、テレビ局の制作担当者は高視聴率のために働いていると言っても過言ではない。ここに特有の問題が横たわっているのだ。先に触れたように、ネタを抜いてくることしか知らない人間や、ベストセラーの数が出世に直結する仕組みだからに他ならない。もちろん、メディア業界内部にも営業や経理畑の優秀なスタッフがたくさんいる。が、こうした部署出身の人材が経営トップに就任しているケースは、筆者の知る限り大手では1社もない。

 従来のように黙っていても広告が入り、販売が一定量確保できていたならば、スクープやベストセラーを追うだけに生き甲斐を見出してきた特殊な人間がトップでも経営は成り立った。だが今後、従来と同様に広告が入り、販売部数や視聴率が伸びる保証は1つもない。経営のプロが舵取りをする一般企業がもがき苦しんでいる中で、経営の素人しかいないマスコミ界が同じように業績を回復できるはずがない、というのが筆者の見立てだ。

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