“カネを返せ!”というのは誰か? 窮地に追い込まれる消費者金融シリーズ・“新借金地獄”の時代(2/3 ページ)

» 2009年07月01日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

高止まりが続く過払い金請求

 過払い金返還請求によって、貸金業者(個人1050社、法人1940社)はどのくらいのコストを支払ってきたのだろうか。日本貸金業協会の調べによると、貸金業者は2年間(2006年度と2007年度)で3兆8713億円の引当金を積んできた。また過払い金の返還額を見ると、2006年度は2936億円(289社)だったが、2007年度は前年度比2323億円増の5259億円(341社)に膨れ上がった。

 ただし、この金額は実際に現金で返還した分であって、それ以外にも元本毀損分がある。出資法で貸し出していた債権を利息制限法の金利で計算し直すと、すでに元本分まで返済が終わっているケースがある。この消えた分が元本毀損分となり、2006年度は2599億円(259社)、2007年度は4252億円(同1653億円増)だった。

 過払い金の問題は返還額だけではなく、元本毀損分を足した金額で見なければならない。つまり過払い金返還の影響を見ると、2006年度は5935億円、2007年度は9511億円と1兆円に迫った。

 さらに返還するにあたっての諸経費も忘れてはいけない。例えば大手消費者金融4社の合計(2008年4月〜9月)を見ると、月間返還件数は平均で3万5291件。1社当たり9000件ほどで、1カ月の稼働日数が20日間だとすると、1日で約450件処理しなければならない。また対応している従業員数は858人、年間の人件費は54億6000万円にも達するという。

(出典:日本貸金業協会)
過払い返還請求者のプロフィール(出典:日本貸金業協会)

 依然として、高止まりを続ける過払い金返還訴訟――。ある大手消費者金融の広報担当者が、この問題について語った。

 「正直言って、いつまで過払い返還訴訟が続くのか、まったく分からない。このまま訴訟が続けば中堅・中小の業者はもちろん、大手消費者金融も“その日”が来てもおかしくない」と嘆く。もちろん“その日”とは、破たんを意味する。

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