あなたはお金を借りられますか? “借金難民”が溢れる日シリーズ・“新借金地獄”の時代(3/3 ページ)

» 2009年06月29日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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零細業者は“廃業”せざるを得ない

 改正貸金業法の3つめのポイントは、前述したグレーゾーン金利の廃止だ。グレーゾーン金利の廃止は2010年6月までに行うため、猶予期間がある。しかし大手消費者金融では、2007年6月にアコムが上限金利を18.0%に引き下げたのを皮切りに、他社も20%以下に踏み切った。しかしグレーゾーン金利を廃止して、消費者金融各社は十分な利益をあげることはできるのだろうか。

 「消費者金融には3つのコストがある。商品であるお金を仕入れるための『調達コスト』。2つめは、実際に融資をしていく際の『クレジットコスト』。3つめは手続きや管理を行う『ランニングコスト』。実は消費者金融の場合、この3つのコストを足すと、融資金額の20%ほどになる。

 つまり100万円を貸し出すのに、20万円のコストがかかるということ。収益を上げるためには20%を超える金利に設定しなければ、商売ができないということになる。貸付残高が5000億円以上の大手の場合、3つのコストの平均は17.6%。また5000億円以下の業者を見ると、平均で20%を超えている。多くの中堅、中小、零細業者は、いずれ“廃業”に追い込まれるだろう」(小林氏)

貸金業者数の推移(金融庁、クリックして拡大)

苦しいのは中堅・中小だけではない

 上限金利の引き下げと総量規制――。この2つの法改正は体力のない……いや体力のあったはずの消費者金融をも蝕んでいっている、といっていいだろう。

 東証一部上場・中堅の消費者金融「クレディア」は2007年9月、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。負債総額は757億円で、上場する消費者金融の経営破たんは初めてだった。クレディアに続き、中堅の「アエル」も2008年4月に民事再生手続きを申請した。負債総額は231億円だった。いずれも法改正の影響を受け、消費者金融が倒産に追い込まれたケースだ。

 もちろん中堅だけが苦しいのではなく、大手といえども“安泰”とはいえない。

 武富士の2009年3月期連結決算を見ると、当期純利益が2561億円の赤字(前期は141億円の黒字)。プロミスも同1251億円の赤字(同159億円の黒字)に陥った。赤字に転落したのは2社だったが、アイフルは同84.5%減の42億円、アコムも同61.4%減の136億円と大幅に減少した。また各社とも融資残高が前年度比2ケタ減となった。これは前述した総量規制を前倒しに行っている影響で、貸し渋り・貸しはがしが融資残高の減少につながった。

 ただ大手消費者金融だけではなく、業界全体を苦しめていることがある。それは「過払い金の利息返還請求」だ。この問題については、次回紹介する。

 →“カネを返せ!”というのは誰か? 窮地に追い込まれる消費者金融

プロフィール:小林幹男(こばやし・みきお)

1961年長野県生まれ。立教大学経済学部卒業後、大手リース会社を経て、ABN AMRO Bank(オランダ銀行東京支店)に入社。その後、リーマン・ブラザーズ証券、モルガン・スタンレー証券で、シンジケートローンや証券化などに携わり、企業の資金調達をアレンジ。現在は金融コンサルタントとして活躍している。


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