あなたはお金を借りられますか? “借金難民”が溢れる日シリーズ・“新借金地獄”の時代(1/3 ページ)

» 2009年06月29日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「急にお金が必要になった。しかしお金がない」――。このような経験をしたことがある人も多いだろう。そんなとき、あなたはどのようにしてお金を工面してきただろうか?

 「家族や同僚、友人から借りた」といった人が多いかもしれないが、中には消費者金融からお金を借りたという人もいるはず。繁華街を歩いていれば、消費者金融の店舗や無人契約機を見つけるのは難しくない。「会社の同僚に頭を下げてお金を借りるより、無人契約機で“手軽”に借りるほうがいい」といった理由で、消費者金融を利用している人も多いのではないだろうか。

 しかし、である。これまで消費者金融からお金を借りていたのに、突然、借りられなくなるかもしれない――。そんな事態に直面するかもしれないのだ。

 ここ数年、実は“お金を借りにくい”状況が起きていることをご存じだろうか。日本貸金業協会の調査によると、成約率(貸金業者に借入を申し込んだ件数÷実際に契約ができた件数)は2006年9月時点で42%だったが、2008年3月には26%と、1年半で16ポイントも減少しているのだ。

 長引く不況の影響を受け、お金に困っている人は多いはず。しかしなぜ消費者金融は、お金を貸さないのだろうか。『「貸せない」金融――個人を追い込む金融行政』の著者・小林幹男氏に、消費者金融を取り巻く環境などについて話を聞いた。

改正貸金業法に基づく規制強化のスケジュール

日程 内容
2006年12月 改正貸金業法が成立
2007年1月 第1条施行:無登録営業の罰則強化
2007年12月 第2条施行:取り立て規制の強化、業務改善命令の導入
2009年6月 第3条施行:貸金業者の最低純資産額を300万円〜500万円から2000万円に引き上げ
貸金業務取扱主任者(国家資格)の試験制度がスタート
指定信用情報機関制度スタート
2010年6月まで 第4条施行:融資総額を年収の3分の1以下とする総量規制がスタート
貸金業者の貸出金利の上限を15%〜20%に
貸金業者の最低純資産額を5000万円に引き上げ

まだまだ減少する消費者金融

小林幹男氏

 なぜ日本は、“お金が借りにくい”状況になってしまったのだろうか。実はこれには2006年1月、最高裁判所の判決が関係している。この判決により、いわゆる「グレーゾーン金利」と呼ばれる、金利帯での貸し出しが禁止されたのだ。

 グレーゾーン金利とは2種類の金利によって生じる、金利の差の部分をいう。1つは「出資法」で、上限金利は年29.2%まで。もう1つは「利息制限法」で、年20%(100万円以上借りる場合は15%)までだ。この2つの金利差は最大で14.2%。しかし消費者金融各社は出資法の29.2%を上限にして、利用者にお金を貸していた。この背景には貸金業規制法43条により、債務者が任意に支払った金利(つまりグレーゾーン金利)は“有効”と想定されていたからだ。

 そして2006年12月、改正貸金業法が公布された。この法改正により、借り手である利用者は「借りにくく」なり、貸し手である消費者金融は「貸しにくく」なってしまったのだ。消費者金融業界が“転換期”を迎えることになった改正貸金業法について、小林氏は3つのポイントを挙げた。

 「1つめは、(改正貸金業法前は)貸金業を営むのに個人であれば300万円、法人であれば500万円の純資産があれば登録できた。しかし法改正によって、まず2000万円(3条施行時)に引き上げられ、最終的に5000万円以上(4条施行時)の純資産が必要となる。つまり簡単に消費者金融を営むことができなくなったのだ」

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