どん底からスタートする思いとは――トヨタの豊田章男新社長就任後初会見を詳細レポート(3/5 ページ)

» 2009年06月26日 08時30分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

副社長が各地域を担当

内山田竹志副社長

内山田 商品企画と技術を担当する内山田です。商品企画の面では今回の経済危機を経験されたお客さまの価値観の変化に対応して、「各地域の状況や特色をより反映したラインアップを再構築したい」と思っています。合わせて「時代をリードしていけるような新コンセプト車の提案を行っていきたい」と思っています。

 技術面ではお客さま目線で、「お客さまをとりこにしていけるようなわくわくする商品の開発を第一に行っていきたい」と思います。さらに、「我々の持続的な国際競争力を確保するための継続的な技術開発にも力を注いでいきたい」と思っています。安全や環境は我々の技術の現在の強みではありますが、さらに運転してわくわくするようなクルマとそれを実現するための技術開発をより推進していく所存です。

布野幸利副社長

布野 中国やアジア、中南米などの新興国を担当する布野幸利です。トヨタ車の販売台数を見ると、これらの新興国市場は全世界のトヨタ車販売台数の3分の1を占めるまでに成長しています。今後、先進国は低成長軌道に入るという見方が大勢を占める中、中国を始めとする新興国に一層目を向けていく必要があると考えています。比較的人口規模が大きいインドやブラジルなどの大市場で、トヨタのシェアは決して高いとは言えません。裏を返すと、今後も成長が大いに期待できるということです。

 そのための戦略として、経済活動の活性化にともなって市場拡大が期待される商用車市場、新たに登場するミドルクラスのニーズを取り込んだファミリーカー市場で魅力的な商品を積極的に販売していきたいと考えています。

 機能としては渉外広報と営業企画の分野を担当します。豊田佐吉の言葉に「障子を開けてみろ、外は広い」という言葉があります。渉外広報の面では皆様方との関係を始めとして、アンテナ感度を高くして、外の声に積極的に耳を傾けていくことに努力していきたいと思っています。

 営業企画の面では、豊田社長が掲げているお客さまを見た商品開発、お客さまを向いた販売に血と肉を付けていくのが私の1つの大きな役目であると認識しています。私はトヨタウェイの1つの教えである3C――「コミュニケーション」「コーポレート」「コンシダレーション」を肝に銘じて、皆様方との関係、販売店や代理店の従業員の皆様方との関係などで「濃密なコミュニケーションを続けて行きたい」「積極的にコミュニケーションしていきたい」と思っています。

新美篤志副社長

新美 北米地域を担当する新美篤志です。北米は2億5000万台の保有があり、人口も増え続けており、引き続き世界最大の市場と認識しています。従って、北米でのオペレーションのさらなる自立化を進め、お客さまに支持されるクルマを現地で開発し、生産し、販売、サービスすることで地域社会、並びにグローバルトヨタに貢献していきたい。

 機能としては生産企画、生産技術、製造を担当します。トヨタのものづくりの現場の実力に磨きをかけて、変化に強い世界最強のグローバル集団を目指します。そのために1人1人に考える場を作り、そして考える人作りに注力していきます。私は生産分野に長く身を置いた者としてトヨタのものづくりに誇りを持ち、その誇りを大切にしながらも謙虚に人の声に耳を傾け、現地現物で事実に目を向けてマネジメントしていきます。厳しい時代ですが、だからこそ「意志あるところに道あり」と思っています。

佐々木眞一副社長

佐々木 欧州地域を担当する佐々木眞一です。この地域は自動車文化の先進地域で、強力な競合他社がたくさんいます。またお客さまや労働状況に関して、我々により厳しいクルマ作りを要求してくるという点が特徴です。謙虚に学びつつも、トヨタの強みであるお客さま第一のクルマ作り、品質や技術に磨きをかけ、「次のクルマもやはりトヨタだ」と言っていただけるブランド力を付けていけるよう努力していきます。また環境技術では、やはりハイブリッドを戦略の核としたいと考えています。

 担当の機能は総合企画、調査、TQM(Total Quality Management)推進等の統括分野と、調達、品質保証本部、カスタマーサービス本部、情報システム本部等の各本部を担当します。統括分野では、各機能本部間やグループ企業間の連携や議論の活発化という点に留意した運営をしていきたいと思っています。

 担当機能本部が多岐にわたりますが、それぞれ専門分野に精通した本部長や常務役員が配置されているので、私はよく話を聞く耳と現地現物で何が真実であるかということを見る目を鍛え、変化をすばやく的確に経営判断に結び付けることが重要であると考えて、異常の発見に努力していきます。そのためにも社内でも一番「バッドニュースファースト」の文化が進んでいると言われている、品質保証本部の事務フロアの中に執務席を置きます。

 最後に(私は)40年間トヨタで勤めました。この間、諸先輩に教えてもらった「品質は工程で造り込む」、この言葉の大切さが誰よりも体に染み付いていると思っています。製品作りだけではなく、トヨタのビジネスすべてのプロセスにこの考え方が適用できると考えているので、次の100年にも通用する企業としての体質作りをこの考え方のもとで行っていきます。具体的には、私の信条でありライフワークと考えている「自工程完結※」の考え方が全社に定着するよう力を入れていきます。

※自工程完結……自分の担当範囲をしっかりこなし、後工程に迷惑をかけないようにすること。
一丸陽一郎副社長

一丸 日本国内を担当する一丸陽一郎です。足元の日本の自動車市場は、エコカー減税やエコカー買い替え支援策の効果によって需要は活性化しつつあります。トヨタの受注も4月以降、2ケタ伸長となっています。「2020年をめどに新車販売の2台に1台を電気自動車やハイブリッドといったエコカーにする」というエコカー世界最速普及プランを政府は掲げており、足元の勢いが中長期的に世界市場をリードする流れにつながるよう努力したいと思っています。

 機能としては総務人事、経理を担当します。現在も厳しい経済環境の中で、グローバルトヨタのメーカーすべてが危機感を共有し、徹底した双方向コミュニケーションによって、課題のベクトルを合わせること。それとともに、すべての職場でお客さま第一、現地現物、創意工夫を理解して実践できる人材を育てていく、そのような風土と仕組みを展開していきます。

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