「明石家さんま」さんに学ぶ、コーチングのテクニック(1/2 ページ)

» 2009年06月23日 07時00分 公開
[葛西伸一,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:葛西伸一(かさい・しんいち)

大学卒業後、大手エレクトロニクス商社に勤務。その後、IT業界、映像コンテンツ業界と15年間の営業・企画・マネージャー等の経験を経て、 2007年4月に(株)メンター・クラフト設立。豪州ボンド大学大学院MBA(経営学修士)エグゼクティブ・コーチ(JIPCC認定)、日本コーチ協会正会員


 「明石家さんま」さんが、常に好感度タレントランキングで上位であるという事実は驚くに値しないだろう。では、なぜ彼はあれほど好感度が高いのだろうか。

 彼の持っている高いコミュニケーションスキルを我々が盗むことで、ビジネスに活用できないだろうか。1週間に10本近いレギュラーを抱えている彼の人気の秘密に迫り、彼のナチュラルコーチングの技術を分析する。

「傾聴」に関して、ズバ抜けた才能を持つ

 明石家さんまのくったくない笑顔、いやみのないトーク、女性からも男性からも愛されるキャラクターはどのようにして作られるのだろうか。

 私がコーチング研修を開催する際、必ず参加者からこんな質問がくる。「コーチングを実際に職場でやるにはどうしたらよいでしょうか?」

 コーチングの有効性を認識し、理論を学ぶことはできても、いざ職場に帰ってから実践することに不安を覚えるのだ。実際に使えるようなリアルなコーチングをしている人はいるのだろうか? こんな疑問に答えるとき、いつも「明石家さんま」さんを例に出す。

 彼こそがコーチングの天才です。明石家さんまさんのトーク番組を見てください。

 彼はたった数分間の間に「傾聴」「承認」「質問」を繰り返す。特に「傾聴」に関してはズバ抜けた才能を持っている。その秘密は、彼の「共感性」にある。

 実際の番組、「さんまのまんま」を思い浮かべてほしい。あの番組は彼にとって、彼の才能をいかんなく発揮できる、いわば「ホーム」である。数分の間に傾聴、オウム返し、言い換え、要約を行っている。これがゲストのトークを弾ませて、普段のテレビでは見れないゲストの素顔を引き出しているのだ。それによって、見ている視聴者へ、あたかもその場所にいるかのような共感性を与え、好感をもたれるのだ。

 実際のゲスト(女性アイドル)との会話を事例にとってみる。

さんま「彼氏に、そうやって料理作ってあげるんだぁー」(クローズドクエスチョン)

ゲスト「いえ、彼氏いませんから」

さんま「え? 彼氏おらへんの? ありえへんわー。俺やったら、絶対ほっとかへんわー」(オウム返し+承認)

ゲスト「さんまさん、誰か紹介してください」

さんま「えー、どんなタイプの男性が好みなの?」(オープンクエスチョン)

ゲスト「さんまさんのような方がいいですー」

さんま「ひえー、むちゃくちゃうれしいけど、俺なんかより、○○ちゃんやったら、いい男いくらでもおるやろー」(承認)

ゲスト「そんなことないですよー。でも、面白くて優しい男性で……芸能人でない方がいいですね」

さんま「へー、○○ちゃんは、普通の人がいいんだー」(要約、言い換え)

さんま「俺が芸能人でなくて、20年若かったらなー(悔しがる)。……ってただのおっさんやろ!」(承認)

 上記のやりとりは、実際の放送番組で明石家さんまさんがよく、女性アイドルなどのゲストに使う、相手の本音を引き出すテクニックである。

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