プリッツの「つれてって君」は天才だ!それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2009年06月19日 12時59分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年6月19日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


プリッツ公式Webサイト

 江崎グリコの「プリッツ」は46年という押しも押されもしない、堂々のロングセラー商品である。同じくロングセラーとして姉妹商品のような存在である「ポッキー」よりも3年先輩。「1粒300メートル」のキャラメルで名をはせた同社が、菓子カテゴリーへ進出を狙った戦略商品であるが、ポッキーとともに見事に看板商品として長きにわたり売れ続けている。

 ロングセラー商品、または定番商品といわれるモノが、長い年月を経て人々に愛され、生き残っているヒミツは何だろうか。そんな問いかけをすると、多くの人から「変わらないこと」という答えが返ってくる。

 確かに商品を作り続ける上での「こだわり」は不変であってほしい。しかし、商品が生き残っていくためには、時代や人々の嗜好(しこう)の変化に敏感に対応する必要がある。食品であれば、高まる健康志向に対応して減塩やローカロリーなどに対応する必要がある。また、消費者の嗜好の多様化に合わせて、様々な味のバリエーションが開発され続けているのである。

 プリッツが好まれ、売れ続けているのは、一つには食べやすさと食感のよさだ。商品の語源は欧米で食べられている「Pretzel(プレッツェル)」である。特に米国で食べられているスナック菓子タイプの物が開発のヒントになっていたはずだ。しかし、米国のプレッツェルはあまりにゴツくて固い。かつてブッシュ元大統領がフットボール観戦中に喉に詰まらせて倒れたことも、記憶に新しい。

 それを日本市場に合わせて、ほどよい固さと、指でつまんでポキポキと食べられるように工夫したのがプリッツだ。その形状と食感が中核的な価値である。

 その価値を実現する製品の実体としては、様々な味のバリエーションであろう。発売当初「バタープリッツ」という味で登場したが、その後様々な味が開発され、さらにご当地味の展開によって実に多様なバリエーションが市場に投入されることになった。

 しかし、今回の製品仕様変更は、江崎グリコのホームページにも掲載されていない。同社に確認したところ、GWに合わせて4月中旬から5月中旬にかけて販売した期間限定商品だという。

 変更されたパッケージが店頭において目に止まった時のインパクトは絶大だった。コンビニの棚をふらふらと歩いていると、こっちを見つめる愛くるしい視線に気がつく。ふと目をやると、つぶらな瞳がこっちを見ているではないか。

 カワイイ……。

 何だろうと思って手に取り、パッケージを見ると、使い方が描かれている。

 「つれてって君」というらしい。

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