友達は、なぜ「友達の友達」の話をしたがるのか?(1/3 ページ)

» 2009年06月16日 07時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 「友達の友達」がアルカイダであると言った鳩山大臣が更迭された。自民党の右往左往も、都市伝説化しそうな気配だ。それにしても、「友達の友達」という微妙な関係から発信される物語には、こうも伝播力があるのだろうか?

 “口述の歴史”あるいは“擬似的な歴史”と呼ばれる都市伝説は、大概「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」で始まる。目の前の友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」は、具体的に誰かなどと突っ込むのは無粋というものだ。ましてや、会わせてくれなんて言おうものなら、空気の読めない奴とレッテルを貼られるに違いない。

 そこで、友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」の数を計算してみたい。まず、1人の社会人が「友達ないしは知ってる」と言えるヒトの数は、どれくらいか考えてみる。それを知るため、手っ取り早いのは、携帯電話の電話帳登録数だろう。

「身近なネタ」ほど、なんとなく信じられやすい

 あなたの携帯電話の電話帳には、現在何件登録がありますか? ある調査によると、以下の結果となった(関連リンク)

携帯電話電話帳の登録件数

件数
0〜100件未満 32.0%
100〜200件未満 35.0%
200〜300件未満 20.8%
300〜400件未満 7.8%
400〜500件未満 2.8%
500〜600件未満 1.0%
600〜700件未満 0.4%
700件以上 0.2%
※エスカーラ読者の女子500人によるアンケート結果より。

 300件未満に約90%が集中する。男女も含めた平均数は、150〜200人に収まるだろう。

 そこで1人当たり200人くらいが、噂話の引き合いに出せる「友達ないしは知り合い」と想定すると、友達が言うところの友達の友達は、200×200×200=800万人である。それに4親等までの親戚数を掛け合わせると、きっと日本の人口を超える。

 要するに、友達が言うところの「友達の友達」や「友達の親戚」を合わせると、この日本の全部なのである。日本でヒトが巻き起こしているすべてが、「友達の友達」や「友達の親戚」という想定で語り尽くせるというわけだ。

 だから、友達の親戚が浜崎あゆみでも、ありだ。友達のお姉ちゃんが福山雅治とつきあってたも、ありだ。嘘ではない。何でも、ありなのだ。

 都市伝説の「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」は、昔話の「むかしむかしあるところに」と同じようなものなのだ。現在、世界人口を66億人なので、「友達の友達の友達の友達の友達」までたどれば、充分に全世界を網羅できる。

 そして、なんとなく微妙に近い関係性を強調して始まる都市伝説は「身近なネタ」ほど、なんとなく信じられやすい傾向を持つ。「微妙なネタ」ほど、「友達の友達の話だけど」ないしは「友達の親戚の話だけど」は、伝播力を持つ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.