インサイトVS. プリウス――トヨタはなぜキレたのか?それゆけ! カナモリさん(1/3 ページ)

» 2009年06月15日 07時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年6月12日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 ホンダ・インサイト対トヨタ・プリウスの戦いが激化している。それもあり得ないぐらいの激しさで。百獣の王ライオンはどんな獲物でも全力で倒すと言われるが、圧倒的な力を持つトヨタのホンダ・インサイト叩きは異様な様相を呈している。

 確かに、3代目プリウスの発売に先行して、ホンダ・インサイトは絶好調とも言える受注状況になった。それに対し、トヨタは常識では考えられない手段をとった。旧型となる2代目プリウスを40万円以上も大幅値下げして販売を継続。さらには、新型の3代目プリウスの最低価格を極めて低廉に設定したのだ。

ホンダのインサイト

 消費財などの場合は、大きなシェアを持つリーダー企業が、当該カテゴリーにチャレンジャーが参入してきた時、その出鼻をくじくため、発売のタイミングでキャンペーン的に値引きをすることはある。このコラムでも以前、キリンビバレッジ「潤る茶(うるるちゃ)」と日本コカ・コーラ「爽健美茶」の戦いを紹介した

 しかし、一度購入してしまえば反復購入が望めない耐久消費財である自動車で、一過性のキャンペーンではなく、定価そのものを引き下げるというのは、筆者は聞いたことがない。トヨタがハイブリッド車市場を一部たりとも明け渡す意志のない現れだろう。

 価格の問題だけではない。ダイヤモンドオンラインの記事「業界騒然! ホンダ「インサイト」をコケにする トヨタ「プリウス」の容赦ない“比較戦略”」からはトヨタのすさまじい意志が伝わってくる。

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