ゴミの山を“宝の山”に……ある会社の方法とは?松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年06月09日 08時13分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

国内最大級の複合ゴミ処理場

 ヘッセン州の州都ヴィスバーデンに程近いホッホハイム市郊外にあるゴミ処理・埋め立て処分場「ライン・マイン埋立地」には半径50キロ圏から家庭系、産業系のゴミが持ち込まれる。麦畑に囲まれた90ヘクタールの広大な敷地には、ゴミ埋め立て処分場のほか、生ゴミの発酵処理工場、バイオガス燃焼施設、灰木材燃焼施設、汚水処理施設、汚染土壌処理施設などが集まり、生ゴミだけでも年間4万5000トンを処理している。ここは単なるゴミの埋立地ではなく、ドイツでも最大級の複合ゴミ処理場と言える。

ゴミ処理・埋め立て処分場「ライン・マイン埋立地」の入り口

 有機物を含むゴミ埋め立て処分場からは必ずメタンガスが発生するため、何らかの方法でこれを処理しなければならない。そのまま放出したのでは爆発の危険があり悪臭の原因ともなる。ガスは燃焼させるのが一般的だが、無駄に燃やすのではなく発電や温水供給の燃料として利用できれば理想的だし、大気中に放出される温室効果ガス(メタンガス)の削減にも貢献する。

 なお、ゴミ埋め立て処分場から収集されるガスも家畜の糞尿やバイオマスから生産されるガスと同様「バイオガス」であり、再生可能エネルギーの1つとして位置付けられている。ゴミの山に設置された「井戸」からガスを吸い出すため山の内部は大気圧を下回り、ガスが大気中に漏れ出すことはない。

 こういった「ゴミ埋め立て処分場のガス利用技術」を1980年代に実用化したパイオニアがリーテック社である。

ガス収集の中央バルブ

技術的課題

 さて、ゴミの山のバイオガスを使用する際にはいくつか解決しなければならない問題がある。

 まずメタンガス濃度が30%程度と低く燃料としての質が悪いため、必要に応じて天然ガスを添加することになる。また、ガスに含まれる硫黄酸化物や微細な砂がボイラーやガスエンジンを傷めるので、関連機器メーカーは「ガスの安定燃焼」と「ボイラーやガスエンジンの耐久性向上」の技術開発にしのぎを削っている。

バイオガス燃焼エンジン(最大出力1300キロワット、発電効率40%)。電力はすべて売電

 それに加え、ゴミの山から収集されるバイオガスの量は徐々に減少し、20年も経って安定期に入るとガスの発生は止まる。ガスがなくなれば、当然、燃焼施設全体が不要になってしまう。

 これに対してはボイラーやガスエンジンを複数台設置しガスの発生量に応じて徐々に稼働数を減らしながら対応し、さらに生ゴミ発酵処理工場を併設しそのバイオガスを併用することが多い。やはり、このライン・マイン埋立地でも生ゴミ発酵処理を行っている。

生ゴミの搬入所(左)、生ゴミ発酵処理槽(右)

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