ゴミの山を“宝の山”に……ある会社の方法とは?松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2009年06月09日 08時13分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

松田雅央(まつだまさひろ):ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ(http://www.umwelt.jp/)


 第二次世界大戦前まで、ドイツの家庭ゴミは村や街の郊外にまとめて捨てられていたそうだ。谷や林といった使わない土地にゴミが野積みされ、そういった無管理のゴミ捨て場が国内におよそ数万カ所存在したと言われている。現代と違って当時は土に返らないプラスチック系のゴミが少なく、布・木材・紙は家庭用の燃料として最後まで有効利用されていた。そもそもゴミの量が今より少なくゴミ問題は社会の許容範囲内に収まっていたようだ。

 ところが戦後になって化学製品が普及し大量消費社会が始まると、ゴミは増加し現在のような大規模ゴミ埋め立て処分場が必要になる。しかし初期のゴミ埋め立て処分場は環境保全の視点を完全に欠き、特に地下水の汚染が深刻化してしまった。環境保全という概念が生まれ、古いゴミ埋め立て処分場の地下水管理が行われるようになったのは1960年代に入ってから。処分場の建設段階から環境対策が施されるようになったのはそれ以降の話だ。

ゴミを積み上げるのがドイツ式

 こういった埋め立て処分場に捨てられてきたゴミの種類は日本もドイツもそれほど違わないのだが、処分場の構造は大きく異なっている。筆者の知る限りドイツでは海辺にゴミを捨てて埋立地を造成することはなく、市街地から離れた場所にゴミを埋め、積み上げてゆくのが一般的だ。ゴミの高さが数十メートルになり処分場のキャパシティーが一杯になったところで搬入を止め、防水用のプラスチックシートと土を被せ緑化する。こうして誕生するのが文字通りの「ゴミの山」である。

ゴミの山(黒い筒状の物はガス収集用の井戸)

 普通、「ゴミの山」は悪臭・汚れ・危険などネガティブなイメージの付きまとう厄介者でしかない。ドイツのゴミの山は管理されてはいるが、緑化したからといって農業に使えるわけではなく、数十年の閉鎖管理が必要なお荷物だ。

 それでも全く使い道がないわけではない。発生するメタンガスの有効利用もひとつの手で、これが「ゴミの山をエネルギーの山に変える発想の転換」の第一段階だ。今回は「ゴミ処理技術+エネルギー」をモットーに、この分野のパイオニアとしてドイツ、スイス地域でビジネス展開するリーテック社を取り上げる。

リーテックのシュライファー副所長(ライン・マイン埋立地事業所)
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