コラム
» 2009年06月04日 07時00分 UPDATE

郷好文の"うふふ"マーケティング:お宝本を探せ!――神保町の古書交換会でプロの技を見た (1/2)

古書店街の代名詞、神田神保町で日々開かれている古書交換会。太宰治の限定300部の『駈込み訴え』、司馬遼太郎の直筆原稿、与謝野鉄幹が発刊していた詩歌雑誌『明星』など希少な書籍が流通する。古書店主たちはどのように仕入れを行っているのか、その現場をのぞいてみた。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 JR池袋駅東口から一ツ橋行きの都営バスに乗る。伝通院を越えて、春日通りをゆらゆらと下り、文京区役所を右に折れてJRの高架をくぐるとJR水道橋駅東口だ。中学生だった私は白山通りに降り立つと、手前の古本屋から探索を始めたものだ。架台の均一価格を見回し、洞のように薄暗い店の棚の左右を瞬時に品定めして、「何かありそうだな」とピンとくれば店の敷居をまたぐ。買い手の探索力を値踏みするような店主の視線を浴びつつ、お目当てを探すのだ。

 神田神保町、それは古書店街の代名詞である。当時の私は読書欲が学生のお小遣いでまかなえる範囲をはるかに上回っていたので、古本が頼りだった。神保町の交差点を左に折れて、駿河台下で折り返し、たまには九段下まで足を伸ばす。厳かな一誠堂書店(創業100年という)はハードルも価格も高かった。よく買ったのは小宮山書店だろうか。ドキドキして入れなかったアダルト書店(入れる年になるとつまらないのに)、映画や美術や演劇、宗教や歴史や法律書や洋書などなど、あらゆる種類の本が集まるワンダーランド、それが神保町だ。

 それから30年以上経った今……ビルはいくつか建ったものの、古書店街に大きな変化はない。いや、むしろ店舗の数は増えている。なぜ古書店が何十年も生き残れるのか? それを支えているのが“同業者の古書交換会”だ。

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明治古典会に訪れて

 書店街の裏手にある東京古書会館では、日替わりで専門ジャンルの異なる古書市場(いちば)を毎週開催する。全古書連(全国古書籍商組合連合会)が組合員(加盟古書店)を対象に開催するもので、同業者の本の交換会である。専門分野の本を仕入れ、専門分野外の本を手放す市場、一般者が参加できないプロの交換場である。取材で訪れた明治古典会は毎週金曜日に古書市場を開き、その対象は明治以降の文学や芸術、映画や芸能など、コレクターズアイテムも多く質・量ともに業界随一と言われる。当日は200店以上が参加しており、活況を呈していた。

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 古書店主でにぎわう交換会会場の“最終台”に載るのは目玉品。源氏物語の活版本の販売価格は何と50万円。太宰治の限定300部の『駈込み訴え』、司馬遼太郎の直筆原稿、与謝野鉄幹が発刊していた詩歌雑誌『明星』など気になるものばかり。日本文化のオーラがまぶしくて圧倒された。それをチラと手に触れることもできるので、取材を忘れて、ただただ会場内を歩き回った。案内して頂いた東京古書籍商業協同組合広報課の大場奈穂子さんは、そんな私の姿を見てあきれていた(笑)。

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