なぜサクマの「いちごみるく」は、愛されているのか?(1/2 ページ)

» 2009年06月03日 07時00分 公開
[笠井清志,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:笠井清志

船井総合研究所シニアコンサルタント。複数企業でキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)で連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。


 昔から慣れ親しまれてきたサクマ製菓の“いちごみるく飴”。「サクサクおいしい」「コリコリ食べれちゃう」という斬新なフレーズで消費者から絶対的な支持を得ている。

 長期間にわたって人気を保っている秘けつはどこにあるのだろうか? そして、今後の戦略はどのようなものなのだろうか?

 今回はサクマ製菓“いちごみるく飴”の裏側に迫る。

いちごみるくの誕生

 カリッ、コリッとつい食べたくなってしまう飴。この季節になると、たくさんのいちご商品がコンビニの棚に陳列されるが、その中で最も古い定番商品。今回、私がターゲットにしたロングセラー商品は、サクマの「いちごみるく」だ。

 従来のアメは、口の中にアメを入れて、舐(な)める。そしてゆっくりと口の中で溶けていくものであった。しかし「サクサクおいしい」「コリコリ食べれちゃう」という斬新なフレーズで、アメ市場に乗り込んだサクマの「いちごみるく」。日本国中のアメファンから絶大な人気を誇っている理由は果たしてどこにあるのだろうか?

 1970年、まだ甘いものが成熟していない時代。サクマの「いちごみるく」が誕生した。1964年、自社でチョコ入りアメ「チャオ」を開発。この商品のヒットにより、「飴+α」のコンセプトに「手ごたえを感じた」と当時の開発担当者は語る。そして米国から入ってくるガムをヒントに、食感を意識した「噛む飴」という、これまでアメを開発していた企業にはなかったコンセプトで開発された。

 当初、ほかにはない「噛む飴」という新しいコンセプトということもあり、すぐには駄菓子屋に受け入れてもらえず、地道に駄菓子屋を開拓していった。「カリ・コリ飴」「噛む飴」という新しいコンセプトをPOP(消費者が商品を購買する場で行なわれる広告)や商品パンフレットで打ち出し、斬新なパッケージが消費者の目を引き、除々に市場に浸透していった。

 こうした成果が実を結び、日本テレビの子ども番組「とんだりはねたり」(月〜金放送)で採用されることになった。子どもたちにおやつを渡すシーンで、繰り返し「いちごみるく」が露出された。そして子ども向けのアメとして一気に消費者の認知度が高まり、人気を博した。

 このテレビ効果により、急速に人気が高まる一方で、販路としての街のお菓子屋の数が減少していった。テレビ効果を契機に、一気に市場を拡大したいと考えていたサクマ製菓にとっては、大きな課題であった。

 そこで米国から到来し、急拡大していたスーパーおよびGMS(General Merchandise Store:総合スーパー)に目をつけた。テレビ効果もあり、人気もあった「いちごみるく」は、うまくチャネルシフトに成功し、スーパーやGMSに大量に卸すことが可能となった。このチャネルシフトを機に「いちごみるく」は、まさに時流にのった商品となり、現在の地位を不動のものとした。

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