初心者が読むべき投資入門書とは――金持ち父さんへの道現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(2/3 ページ)

» 2009年06月02日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

株式のお勉強のお話

 金融商品を横断的に語る黄緑本と違い、株式の書籍は金融商品の1つの分野だけを取り上げている。つまり株式投資の書籍は、入門書と銘打っていてもある程度は専門的なのである。とはいえ、面倒な話ではあるが、株式の価格は単純な需給均衡では決まらない。また、買い方・売り方やリスク管理手法は、筆者が知っているだけでも10以上はある……。さて、どこから学び始めればいいのだろうか。

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 Agentsの新入生に向けては、効率的市場仮説のウィーク型(ニュースや材料は全て株価に織り込まれており、株価は常に適正価格であるという仮説の中でも定義が最も緩い型)に疑義を呈した上で、個別株のバリュエーションを分析するため、以下のように説明している。

 株価の決定要因には「マクロ要因」「ミクロ要因」「需給要因」の3つがある。

 マクロ要因には経済全体の動き、直接的には関係のない指数の動向、業界の動向など「各企業の経営努力ではどうしようもない」経営成績の決定要因が含まれる。具体的な分析をする上では、マクロ的統計指標の分析やニュースの定性的理解が重要になってくる。

 ミクロ要因は「経営の質」そのものに関連するものである。財務諸表の読み方や、バリュエーションそのもの、つまりある企業の今後10年や20年の経営成績を知ることができるのなら、それを使ってどのように株価を決定すればいいのかといった話が入る(例えばDCFモデル※がそうだ。指標としてはPERPCFREBITDAなども入るだろう)。また、経営成績の予測手法(事業ポートフォリオ分析など)もここに入る。

 以上2つが一般にファンダメンタルズ分析と呼ばれるものだ。

※DCFモデル……Discounted Cash Flowの略。将来のキャッシュフロー(予測)から現在価値を算出する方法。

 そして最後に、需給要因がある。株価のいわゆる“本源的価値”(「そんなものはない」というのが近年の筆者の悟りだが)とは無関係な株式の需給の動きのことである。この分析手法は、ある程度体系化されているテクニカル分析と、全く体系化されていないセンチメント分析とに分かれる。

 前者はチャートを読んだりする“まやかし”ととらえられがちなアノマリー(合理的な経済理論では説明できない経験則)分析、後者は市場参加者の心理に目を向けた分析である。一般に相場師と言われている方は、このセンチメント分析の才にも長けている方が多い。アノマリーベースの投資をテクニカルの部類に入れるなら、システムトレードや金融工学を用いたクオンツ関連の話もここに入るだろう。

 黄緑本は当初株式投資の本だったのだが、この話のような原稿を出したら「難しすぎる!」ということでボツになってしまった。しかし現在、ある投資系出版社と“専門書を読むための入門書”として、来年あたりを目途にこの話を出版化することを画策している。おそらく初版3000部程度の世界になるだろうが、もし世に出ることがあったら、ぜひ手に取っていただきたい。

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