喫茶室ルノアールにあって、スターバックスにないもの(2/3 ページ)

» 2009年05月31日 10時02分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

 2人席から4人席への移動をお願いしたら、快くオッケーしてくれて、飲みかけのコーヒーの移動を手伝ってくれた。そして、「ごゆっくり」と声をかけていただいた。その「くつろぎ感」 と 「目配り」と「気配り」。スタバやタリーズや、いわゆるカフェチェーンには、ないものだ。ビジネス的に、経済合理を追いかけない良さがある。まさしく、40を過ぎたオヤジにとっては「都会のオアシス」である。その古いもの言いが、ピッタリはまる。

街との相性が良い「ルノアール」

 そこだ……そこが、ミソなのだ。

 なぜ「喫茶店」ではなく、ルノアールは、わざわざ「喫茶室」と明記しているのか。喫茶室ルノアール情報を中心に都内で働くビジネスマンを応援するWebサイトには、こんなことが堂々と書かれている。

 「平日は商談・休憩・お昼寝のために利用し、土日は読書のためにルノアールに立ち寄る。そんなルノアールが生活に欠かせないビジネスマンを応援いたします。ルノアールは喫茶店ではなくあくまで喫茶室ですので、コーヒーを飲みに行くのではなく、あくまで何かを行う、それが営業中のお昼寝であったとしても、場所・スペースを求めるあらゆるビジネスマンの味方です。」と。

銀座ルノアールの平成21年3月期売上構成比の比較(出典:銀座ルノアールIR資料)

 だから、よーく見渡してみると、書類に目を通す人。本を読む人。商談(らしき会話)をする人。互いに立って名刺交換している人。

ちゃんと整えられた電源を利用して仕事を黙々とこなすヒト。いびきをかく勢いで大胆に眠りこける人。ただひたすらタバコを吸う人。ほんと、自由自在だ。

 コーヒーを飲みに来ているのではなく、「何かをしに来ている」のだ。「喫茶店」ではなく「喫茶室」としての面目躍如である。

 喫茶室「ルノアール」は、コーヒーを消費しにいく場所ではなく、何かをしにいく=生産の場所であり、目的の場所なのだ。だから、目的の内容は違えど、「目的を達成しに来る」という同志である空気感が、店舗内にある。やっていることはバラバラなのだが、「自分の居場所」を共有している連帯感がある。隣でせっせと仕事をするおっさんを、私は実際には、知らないが、なんとなく知っている人であるような気がするし、私自身がそう見られている気もする。

 「顔見知り」&「馴染み」感とでも言うのだろうか。喫茶室「ルノアール」の目指す「くつろぎ」「安心」の根底とは、そういうものではないだろうか。その「顔見知り」「馴染み」感があるがゆえに、実に街との相性が良い。その街のルールに、その街の生業に、ひしっとはまっている。だから喫茶室「ルノアール」は、街の風景として記憶に残る。

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