広告主をダマし続けていいのか? これからの『SPA!』のあり方集中連載・“週刊誌サミット”(2/3 ページ)

» 2009年05月29日 08時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

広告収入は2年間で4割〜5割減

 僕は17年間ほど『SPA!』で仕事をしてきて、これまでにも「売れる時期、売れない時期」ということはあった。例えば、(全体的に売れていなくても)どこかの雑誌はよく売れていたり、どこかの雑誌は持ち直したり、といった感じだった。

 しかしここ1年〜2年は、部数の落ち方に多い少ないはあっても、ほとんどの雑誌で部数が落ちてきている。多くの雑誌は広告収入にある程度頼っているが、その広告収入も2年間で4割〜5割減という状況だ。

 『SPA!』の場合でいうと、2007年度は広告収入が11億円あったが、2008年度は7億5000万円になってしまった。「もう広告のことを考えるのは止めよう」という方針を打ち出した。ただ何年かは、次の“生き方”を見つけるまで、(広告費を)下げ止めなければならない。景気が良くなれば「また広告が戻るだろう」という考え方をしていては、必ず今の雑誌は潰れていくと思う。

広告のない媒体を目指す

 1990年代の後半、日本企業は合理化といってどんどんリストラをしていった。その後「いざなぎ景気超え」と言われるまで回復しても、(企業は)人員を戻さなかった。今回の不況は雑誌だけではなくテレビや新聞も、広告費を削られていっている。かつてない落ち込みのペースだ。

 景気が回復すれば、頑張っている企業は良くなるかもしれない。しかし(クライアントから)「なんだ雑誌に広告なんて出さなくても、良かったじゃないか」と初めて実感するかもしれない。ここ20年くらい……雑誌だけではなく、テレビや新聞も含めて「広告なんて費用対効果として正しいのか」と、ずっと言われ続けてきた。それを代理店と出版社などがダマしてきたわけだが、それは数年でバレるだろう。

 だから我々は、広告のない媒体を目指さなければならない。じゃあ、どうすればいいのだろうか? というと、結局は実売部数なのだ。出版社といっても規模もいろいろあるので、広告をたくさんもらっているところだったら(広告に頼らない媒体は)難しいかもしれないが、(『SPA!』は)実売部数を伸ばしていくしかない。

 どこの出版社も同じことを考えていると思うが、書籍化の数がとても増えている。ここ数年『SPA!』も雑誌の中で、数多くの単行本を出している。実は紙面からスピンアウトしたり、日頃の取材活動の中で知己を得た方に執筆していただいたりして、年に40冊ほど……今年はもっと出版する予定だ。

 もちろん雑誌は大事なのだが、『SPA!』の場合は書籍で黒字を出している。全体として、2007年度までは赤字ではなかった。そこそこトントン程度。しかし昨年は大幅に赤字に転落してしまって「どうしようか」という事態になった。その結果「ページを減らせ」など、いろいろ言われている。それはすべての僕の責任なんですけども、しょうがないんですけども、苦労しているんですけども……。

 では実売部数をどうやって上げればいいのだろうか? これも陳腐なことだが、結局は今どこで増やすかということになる。『SPA!』の場合、半分以上はコンビニで売っている状態なので、もちろんコンビニや書店などを大切にしなければならない。企画ウンヌンとか……命を賭けて雑誌を作るということをあきらめるのではなくて、すごくいい紙面を作りたいと思っている。しかし劇的に販売収入を伸ばすことは難しい。結局はWebで有料配信しなければならないのだ。

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