おみくじの原価はいくら? 粗利益34億263万円の“ビジネス”(3/3 ページ)

» 2009年05月29日 07時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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「おみくじ」は儲かる

 「政治」や「マスコミ」が不景気だ、不況だと騒ぐばかりでなく、もう少し「吉」の情報を社会に伝えることができれば、自然と世の中は良くなる方へ向かうのではないかと「おみくじ」の調査を見て思う。まさしく「吉報」が、世直しの良薬。政治家の言葉は、おみくじ以下なのは寂しい限りだ。

 では「おみくじ」は、どのくらい儲かるものなのだろうか? なぜ、おみくじビジネスは1000年以上続いているのか? という問いに答えてくれる書籍がある。タイトルがそのまんま『おみくじの原価は1円!―――時代を超えて生き残るビジネス』(金子哲雄著・宝島社新書)である。

 そう、おみくじの原価は1円。おみくじは、見事なまでの高利益率商品であり、ロングセラー商品なのである。参拝者側もあまり深く考えず購入して、何が出てもありがたく受け取る。その時の100円について、深く突っ込んでくる参拝客などいない。完璧にできあがったブランドビジネスである。

 では、どのくらい儲かるのだろうか? 簡単な試算をしてみる。

 前述の伏見稲荷神社の3が日の参拝者は、約250万人。その内の35%がおみくじを購入すると想定すると、87万5000人。おみくじ1回当たりが100円だったら、8750万0000円の売り上げ。粗利益は、8662万5000円。神主、丸儲けである。

 これを全国規模で考えてみる。日本全国の初詣参拝者は9820万人なので、その内の35%がおみくじを購入すると想定すると、3437万人。おみくじ1回当たりが100円だったら、34億3700万円の売り上げ。粗利益は、34億263万円。

 参考までに比較すると、カルチュア・コンビニエンス・クラブの2007年度の経常利益が約34億円である。拠点数1576 店舗、TSUTAYA会員数1899万人が1年間かけて稼ぎ出す利益を、神社は初詣の3が日の「おみくじ」だけで叩き出すわけである。

未来のためのロングセラー商品

 経済的には「凶」の相が出ていると言われる2009年だ。できることなら、「吉」以上を願う。そして、人間らしく「吉」以上の暮らしを実現するために、日々努力する。

 ユダヤ人の格言に「最悪に備えれば、最善が自ずとやってくる」――。そしてPCの父であるアラン・ケイは、「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだす(発明する)こと」という。

 そう……おみくじは、今年を占ってるわけではない。そこから、何を創り出すかが大事なわけである。人間の発明した、未来のためのロングセラー商品なのである。

 結果が最悪だからといって、思考を停止し、行動を止めることが、最大のリスク。おみくじを引くとは、新年の最初で最善の、未来を自ら創り出す機会なのである。

 そう考えると「大吉」だって、「大凶」だって、「大大凶」だって、どーんと来いである。不況だって、大凶だって、前向きに、そこから未来を発明するのであってほしいと思うわけである。

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