米国株の大幅下落にも関わらず円安を好感して底堅い堅調な展開清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2009年05月28日 15時44分 公開
[清水洋介,リテラ・クレア証券]
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明日の相場雑感

 米国株が大幅下落となったのですが、米国での半導体関連銘柄が堅調であったことや為替が円安に振れたことから、売り先行で始まったあとに切り返し、堅調となりました。先物にまとまった買戻しなどもあり、指数を押し上げる要因となったものと思います。円安になった要因が米国景気の回復というわけではないのですが、今回の戻り高値を試す展開のなかで、輸出関連銘柄などは蚊帳の外となっていたことから、改めて見直す動きとなったものと思います。

 「円安を好感する」と言う動きが多いのですが、本来、「円安」というものは「好感」しても良いものかどうか疑問に思うこともあります。「円高」により見せかけの日本の資産が増えることもあれば、逆に「円安」と言うことは日本の価値を低くしてしまう、ということにはならないのでしょうか?もちろん、輸出製造業が主体の産業構造であり、輸出で稼いでいるのですから、それもまた良いのですが、本日のような円安でも評価してもいいものなのでしょうか。

 米国債が売られて長期金利が上昇したということは米国の景気回復を遅らせることになり、米国に輸出している企業にとっては為替差益は見込めるのでしょうが逆に販売数量は減るということになるのではないかと思います。円安=株高と素直に反応してはいますが、円の価値が下がるということは輸入コストが高くなるということでもあり、不景気の中でのインフレ、つまり「スタグフレーション」懸念となる可能性もあるのです。

 米国景気が回復して資金需要が旺盛になって金利が上昇となるのであれば良いのでしょうが、景気の底入れ感が強まっている段階での金利の上昇は非常に危ういものがあるような気がします。また、円安になったといってもまだ1ドル=96円水準であり、販売数量の減少を補うような円安とはいえないのではないかと思います。指数の上値の重さの要因となっていた輸出企業の株価が戻ったこともまだ売られすぎの反動に過ぎず、積極的に上値を追うにはこうした数字ばかりの円安ではなく、米国の景気回復が必要ということではないかと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券などを経て現在リテラ・クレア証券で相場情報などに携わっている。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。


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