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» 2009年05月28日 07時10分 UPDATE

JAniCAシンポジウム2009:20代アニメーターの平均月収は10万円以下――アニメ産業が抱える問題点とは? (1/7)

日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は5月22日、東京大学で「JAniCAシンポジウム2009」を開催、700人を超えるアニメーターの協力を得た業界調査の報告をするとともに、アニメーション産業の置かれている状況を題材としたパネルディスカッションを開催。その模様を詳細にお伝えする。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は5月22日、東京・文京区の東京大学で「JAniCAシンポジウム2009」を開催、700人を超えるアニメーターの協力を得た業界調査の報告をするとともに、アニメーション産業の置かれている状況を題材としたパネルディスカッションを開催した。

 JAniCAは2007年10月に発足、アニメーターの技能向上のための講習会を開催しているほか、アニメ制作環境を改善するための試みも行っている。今回、2008年10月から2009年2月まで行った調査では、アニメーターの収入や労働時間などのデータを収集。アニメーターの平均年収は20代が110万4000円、30代が213万9000円と、一般国民の平均年収を大きく下回る状況が明らかになった。

ah_h1.jpg アニメーターの平均年収と一般国民の平均年収

 調査報告の後に行われたシンポジウムでは、JAniCA監査理事の桶田大介氏が司会を務め、パネリストにはJAniCA副代表でアニメーターの神村幸子氏、テレコム・アニメーションフィルムの竹内孝次社長、東京大学の浜野保樹教授が参加、会場からも関係者が発言するなど積極的な意見交換が行われた。その模様を詳しくお伝えする(最終ページに調査結果一覧を掲載)。

ah_h2.jpg 左から桶田大介氏、竹内孝次氏、神村幸子氏、浜野保樹氏

アニメーターは基本的にフリーランス

――始めに調査結果に関して簡単にご発言をいただけますか?

神村 今回の調査結果は、私たちアニメーターとしては大体分かっていることだったのですが、それが客観的な数字で裏付けられたと思っています。

ah_h3.jpg テレコム・アニメーションフィルムの竹内孝次社長

竹内 2005年に別の団体で実態調査がされて、その結果が報道関係ではあたかも正確な数字であるように流布されました。しかし、それはサンプル数を聞いたら90前後で、しかも誰が答えたかが明確ではありませんでした。そういうものが正しい数字のように出ていたのが非常に嫌だったのですが、今回の調査では(サンプル数が)700人以上、正確と言えるかは別として、かなり基本となる数字が得られたということはすばらしいと思います。ただ、本当は「これは日本動画協会がやるべきことではないか」と僕は思っています。

浜野 竹内さんがおっしゃられたように、一部の情報でアニメーション業界のイメージがこれまで固定されていたと思います。もちろんこの調査が本当に正確かどうかは継続して調査しなければいけないとは思いますが、一応たたき台ができて、数字を通して業界が見えるようにしたという効果は絶大なもので、今回調査をやって本当によかったと思っています。

――最初に所属の意味について考えていきたいと思います。(アニメーターは雇用主と)雇用契約を締結していると考えていいのでしょうか?

神村 雇用契約ではありません。基本的に私たちが「(ある会社に)所属している」と言っている場合、大体はその会社やスタジオの机を借りて通っているに過ぎません。雇用契約はされておらず、ほとんどの人が出来高払いのフリーランスという立場だと思います。

――アニメ業界の場合、なぜフリーランスが主流になるのでしょうか?

浜野 一般の仕事と違って、才能に関わる部分が大きい仕事は能力給になるものです。フルタイムで雇用して給料に格差を付けるということは大変難しくて、米国の統計を見てもアートに関わる雇用では60%がフリーです。アニメーターだけではなく、自動車のデザインまで含めてもそうです。

神村 実はアニメーター自身がよく分かっていないんですね。勘違いしやすいことも確かなのですが、毎日会社に通って、そこの先輩アニメーターから指示を受け、監督され、「この仕事をこんな風にしなさい」と言われてやっているので、特に若年層のアニメーターは自分がそこに所属している社員だと勘違いしているケースが多いです。

――アニメーターと雇用契約や請負契約を結んで仕事をお願いする竹内さんはどのようにお考えですか?

竹内 会社によって社員として雇うかどうかは違いますが、うちでは社員も契約社員もいます。(雇用契約を結ぶ時に)「社員はこういう条件ですよ」「契約社員はこういう条件ですよ」と契約書の読み合わせを今はしています。数年前は「社員というのはどういうものか(アニメーターは)分かっているものだ」という認識がこちらにあったので説明していませんでした。しかし、厚生年金や健康保険などを会社が同額負担していることも、社員であるアニメーターが知らない、分かろうとしないという実態があったのです。

 今は下請法ができて、動画の外注さんでも、原画の外注さんでも、基本的には契約を結んでいこうという認識です。(こちらはそういう認識なのですが)その認識がアニメーターの人たちにあるかどうかは、申し訳ないのですがちょっと怪しいなとは思っています。

――アニメーターにはフリーランスが非常に多いようですが、浜野さんの専門である俳優などの映画産業などと比較するとどうなりますか?

浜野 「皆さん(アニメーター)の給料が安い」とよく言われていますが、実演家では「自称ミュージシャン」とか「自称舞台俳優」が山ほどいて大体年収ゼロなんですね。それの年収はゼロだから、アルバイトをしたり、食いつめて大学の先生をやったり、それで暇な時に舞台に出るという形です。

 そういうことを考えると、こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、フリーランスの中でもアニメーターは結構収入が多い方ではないかと思います。旧自治省が小説家の年収を調べたことがあって、平均年収は1万円でした。また、1970年くらいから調べているのですが、日本映画監督協会に所属している自称監督の方々の平均年収は100万円くらいです。フリーランスというのはそういう状況です。

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