冷たいモノを冷たく運ぶ――“飛脚クール便”の裏側を取材した飛脚クール便の知られざる温度管理に迫る!

グルメ食材のお取り寄せや産地直送の生鮮食品、スイーツ、乳製品など、冷蔵・冷凍品のお中元が人気を集めている。これらを届けるために不可欠なのがクール便だ。クール便はどのように品質保持されているのか? 本記事では佐川急便“飛脚クール便”の裏側を詳しく紹介する。

» 2009年05月27日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 今年もお中元の季節がやってくる。昨今では、産地直送の生鮮食品、スイーツ、乳製品など、冷蔵・冷凍品のお中元が人気だという。これらを送るときにお世話になるのがクール便だ。

 クール便を扱う宅配事業者は複数あるが、荷物の集荷から配達まで、徹底した温度管理を誇るのが佐川急便の「飛脚クール便」。佐川急便では年間3300万個もの飛脚クール便を取り扱っているという。

低温輸送とは“定温輸送”でもある

佐川急便株式会社営業戦略部営業課課長の坂井啓幸氏。全国の飛脚クール便の品質維持・向上に奮闘している

 「クール便とは、ご存じのとおり集荷から配達まで荷物を低温で輸送するサービスですが、低温輸送で一番大事なことって、なんだか分かりますか?」そう問いかけたのは、佐川急便株式会社営業戦略部営業課の坂井啓幸課長。坂井氏は飛脚クール便をもっともよく知る人物だ。首をひねっていると、坂井氏はこう答えを教えてくれた。

 「クール便で運ばれるものは、食品が多いのです。冷凍品が溶けてしまったり、逆に温度が低すぎて、冷蔵品が凍ってしまったりしたらガッカリですよね。低温輸送とはつまり“定温輸送”でもあるのです。飛脚クール便では、お客様が冷やしたものを、そのままの鮮度を保って配送することに、最善を尽くしています」

 冷蔵品や冷凍品を鮮度を保って配送する――そのため飛脚クール便は、冷蔵品は5℃を基準に2℃〜10℃の範囲内で、冷凍品は−18℃以下で管理されている。佐川急便では、輸送過程のすべてでこの温度を守って管理しているとのこと。これこそが、飛脚クール便の他社との差別化ポイントになっているのだ。

 「じゃあ、飛脚クール便がどうやって運ばれているのか、その現場を見にいってみましょうか」

佐川急便とニチレイロジグループが業務提携している理由

 到着したのは、大田区平和島の東京モノレール・流通センター駅東側。東京の湾岸エリアは巨大な倉庫が建ち並び、日本の物流を支える一大流通センターとなっている。その一角、京浜運河に面したこの一帯は低温物流の倉庫が集中する冷蔵団地である。

 「ここが、東京クールセンターですよ」と示された建物には、「ニチレイロジグループ」と書かれていた。佐川急便とニチレイロジグループが結びつかずにいると、坂井氏はこう教えてくれた。

佐川急便が業務提携している、ニチレイロジグループの東京クールセンター

 「佐川急便では、ニチレイロジグループと業務提携して飛脚クール便を提供しているんです。具体的には、低温輸送する商品を仕分けするための拠点として、ニチレイロジグループが持つ全国の冷蔵・冷凍倉庫を利用しています。東京エリアの場合には、東京・平和島にあるこの倉庫の1階と2階の一部を、飛脚クール便を全国に仕分けする『クールセンター』として運用しているんです。つまり、東京に配達される/東京から発送する飛脚クール便は、みなこの平和島のクールセンターを通っているということになります」

 佐川急便では、ニチレイロジグループが持つ全国20カ所のクールセンターに加え、保冷施設を持つ自社の中継センター2カ所を使って、全国に飛脚クール便を仕分けている。

飛脚クール便の輸送体制

年間1500万個のクール便が通過する物流基地

 東京クールセンターの稼働時間は主に夜間・早朝、およそ19時から翌朝6時の時間帯だという。訪問したのは午前9時過ぎ。広い構内はがらんとしており、作業のピークはとうに過ぎていることが分かったが、ときどき巨大な冷蔵・冷凍車が到着する。

 いよいよ冷蔵・冷凍倉庫の中に入る。季節を問わず、冷蔵・冷凍倉庫の中では一年中低温が保たれている。中は寒いので作業用の防寒ジャンパーを着用して入場した。

 倉庫内はいくつかのエリアに分けられている。手前のエリアは、トラックが到着すると荷物を降ろしたり積んだりする入出荷場になっており、積荷用の小型フォークリフトが忙しそうに動き回っている。

クールセンターの中ではフォークリフトが動き回り、パレットに載せた荷物を運んでいる。冷凍倉庫の手前のエリアで、トラックの積荷の上げ下ろしを行う(左)。このエリアは冷蔵庫・冷凍庫よりも温度が高くなりやすいので、厳重に温度管理されている。作業は防寒ジャンパーを着て行う(右)

 「東京23区を担当する21カ所の佐川急便各営業店が集荷した飛脚クール便の荷物は、この東京クールセンターに集められ、仕分けされたあとで、全国のクールセンターに運ばれます。同時に、全国のクールセンターから届いた荷物も、ここで仕分けされ、東京23区を担当する佐川急便各営業店に送られています」

 同社の営業店は全国に356カ所あり、その先には、顧客である荷主と受取人がいる。「ここではお客様からお預かりした荷物を、適切な温度のままで仕分けするよう、細心の注意を払っています。そのためにクールセンターでは、厳重な温度管理が行われているのです」(坂井氏)

 トラックの出入りの際にも温度管理に気を遣っている。トラックと施設の間に隙間ができると、そこから外気が流れ込み室内の温度が上昇する。そこで空気で伸縮するカーテンを付けて隙間をふさぎ、クールセンター内に外気が流れ込まないようにしているのだ。

トラックから荷物を入出荷するときの工夫。外気が流れ込まないよう、トラックと扉の隙間をふさぐ

巨大冷蔵庫の中で荷物を仕分け

 いよいよ重い扉を開けて、厚い壁の向こうにある冷蔵庫エリアに入る。直ちに手がかじかむことはないが、冷気が頬を打つ。

 冷蔵庫エリアの中は5度。天井が高く、広い体育館がそのまま冷蔵庫になったような空間だ。奥には金属の壁があって、その中がマイナス18度の冷凍庫になっている。

巨大な体育館のような空間がそのまま冷蔵庫になっている。中に敷かれたベルトコンベアーは、作業の必要に応じて組み替えられ、効率的に利用される(左)。倉庫の一番奥にある冷凍庫(右)

 このクールセンターで1日に取り扱う荷物の数は、約4万〜5万個。「日々50人から60人、繁忙期は100人ほどの体制で運用しています。温度管理は非常に気を遣っている部分ですので、温度データを日々監視して、適温を超えるとすぐメンテナンスするようにしています」(ニチレイロジグループ)

 1日4万〜5万個ということは、つまり年間1500万個もの飛脚クール便がここで取り扱われていることになる。壮観である。

流通履歴を入力しながら、仕分け作業は迅速に進む

スピーディーに荷物を仕分けするために活躍するのが、下に車輪がついたカゴ車

 荷物を積んだトラックが到着すると、仕分け作業が始まる。作業員たちはトラックから荷物を下ろすと、カゴ車に積み、手で押して冷蔵庫エリアに入っていく。

 冷蔵庫エリアの中には大きなベルトコンベアーがある。このベルトコンベアーを使い、流れ作業で、地域コードを振られたカゴ車に仕分けていく。例えば、木更津なら752、鴨川なら756といった具合だ。

 出荷する場合には倉庫の左右で、関東地方行きと、それ以外の地方行きに大きく分かれて作業するなど、人力に頼りながらも効率的に作業が進むように考えられている。仕分けされたカゴ車は入出荷場に運ばれて、次々にトラックに積まれる。

 荷物を降ろす人、ベルトコンベアーに流す人、流した荷物をカゴ車に仕分ける人に分かれて、整然と作業は進んでいく。カゴ車は、ベルトコンベアーの脇に地域ごとにずらりと並べられ、それぞれに担当者が配置される。荷物にはあらかじめ、届け先の住所に応じた地域コードが、営業店で記入されている。

 カゴ車にも地域の名前が書かれた紙にバーコードが貼ってあり、担当作業員はハンディタイプの端末機で、荷物とカゴ車のバーコードを読んで照合してから、荷物を積む。こうした作業によって仕分けミスを防ぐとともに、荷物が各拠点で「貨物追跡システム」とひもづけられて、いつどこに荷物があるのか流通履歴が明確になるわけだ。

 これは最終的にセールスドライバーの配達完了にまでつながっており、荷物がどこにあるのか、全てインターネットで確認可能になっている。当該システムは「飛脚クール便」に限らず、佐川急便の貨物追跡システムとして完備されている。“宅配便のバックにITあり”なのである。

飛脚クール便の荷物には、それぞれバーコードが付けられている。荷物のバーコードを読み取り(左)、カゴ車のバーコードを読み取って行き先を照合してから荷物を積む(右)

品質保持のポイントは、輸送の全行程にわたる温度管理体制

クール便専用車の内部。庫内の奧(運転席側)には冷凍品を、手前には冷蔵品を積んで走る。冷凍室と冷蔵室の広さは、間仕切りを使って自由に変えられる

 仕分けが終わり、クールセンターを出た後は、佐川急便の物流ネットワークに乗って、各営業店、そして受取人のところへ運ばれる。

 ここで活躍するのが、全国で約7000台が走っている“クール便対応車”である。通常は2トン車クラスのトラックが利用されることが多く、冷蔵商品と冷凍商品の両方を運んでいる。さらに、クール便専用車の場合は、床面をスノコ構造にするなど、荷物の底にまで冷気を回せるように考案されている。また、間仕切りによって冷蔵商品と冷凍商品を積む場所を分けられるので、それぞれの適温を保って輸送できる。

 車両の運転席には、保冷状態が何度になっているかが常に確認できるように温度計が表示されている。輸送中も、冷蔵品は2度〜10度、冷凍品は−18度以下を維持するため、常に荷台の温度管理を行っている。

 つまり、クールセンターの保冷の品質がそのまま車両に実現されているのが、佐川急便のクール便対応車なのである。

天然ガスを燃料にして走るクール便専用車(左)。庫内の保冷状態が常に運転席から確認できるようになっている(右)

ル便車。荷台側面の手前にある扉の部分は冷凍庫、反対側は冷蔵庫になっていて、一般貨物、冷蔵、冷凍の3温度帯の荷物を1台のクルマで輸送できる。ちなみに名前の由来は、クー“ル便”の略から

 このほか、「ル便車」(るびんしゃ)と呼ぶ、他社にはないオリジナルの車もある。これは一般貨物と冷蔵品、冷凍品を一緒に運べる車だが、荷物を混載するのではなく、冷蔵室、冷凍室が作ってあるのがポイント。

 「低温輸送とは、定温輸送でもある」――坂井氏の言葉通り、飛脚クール便では、クールセンターやクルマだけでなく、途中空路を使う空輸の場合にも、航空保冷コンテナを使用することで徹底した温度管理が行われているという。「飛脚クール便として送られる荷物の姿や分量は千差万別ですし、通るルートもさまざまです。お受け取りになるお客様も、住宅密集地にいるかもしれないし、人里離れた場所にいらっしゃるかもしれない。これらのプロセスすべてにおいて温度管理を行い、かつスピーディで正確な配送をするためには、大規模なクールセンターやクール便対応車、クール用の配達バッグなどの配備、そしてセールスドライバーのきめ細かい気配りとノウハウが必要なんです」(坂井氏)

産地直送の通販ニーズにも応えるハイテク輸送

飛脚クール便の取扱個数は順調に伸長。2008年度には過去最高の3300万個となった

 佐川急便が保冷輸送に参入したのは、10年前の1999年。当時は他社がすでにこの分野のサービスを10年前に始めており、独占的な状況だった。しかし、他社ではB to CやC to Cの小口配送が中心で、B to B(企業間)の大口配送なら佐川急便の信用が高い。

 「どうして佐川急便は保冷輸送をやらないの? というお客様の声が大きくなり、総合物流企業として『飛脚クール便』を商品化することになりました。しかし、新たに保冷専用の倉庫を造るとなると莫大なインフラ整備が必要でした。また、他社との差別化を図るためには品質・コスト・スピードを追求していく必要があります。そこで、全国に拠点があるニチレイロジグループ様と、当初からパートナーを組ませていただいているのです。後発なので、温度管理を徹底した品質重視による差別化を戦略的に行っています」(坂井氏)

 食品は多種多様であり、生鮮品や乳製品からパン生地のような加工品もある。それぞれの保管のノウハウがニチレイロジグループには確立されていたから、トライアルから半年といったスピードで、全国展開できたのであろう。

 品質の高いサービスを提供する飛脚クール便。品質を保つためのポイントが2つあると坂井氏は話す。「1つ目は徹底した温度管理。そして2つ目はスピーディで正確な配送です。この2つを両立するのは容易ではありません。これは、保冷のスペシャリストであるニチレイロジグループ様と、総合物流企業として長年経験を積んできた私ども佐川急便が協働しているからこそ実現できるのです」

 2008年度の「飛脚クール便」取扱数は3300万個、2009年は3600万個を予定している。最近では産地直送の生鮮食品、生菓子、乳製品などの通販事業者から、B to Cのニーズが大幅に増えている。品質重視の姿勢が評価されて、「飛脚クール便」が選ばれるケースが増えているのだ。

 現在、飛脚クール便が佐川急便全体のシェアに占める割合は4%ほどにすぎない。しかし宅配便の市場は成長が鈍化する中で、毎年右肩上がりで伸びているのがクール便の分野。それだけに同社でも、重点的に取り組んでいる。現在、クール便対応車は約7000台稼働しているが、これを1万台近くまで増やす計画だ。さらに営業店の保冷施設の増強も計画しているという。

専用のクールバッグで各家庭に飛脚クール便を届けるセールスドライバー。飛脚クール便の最大のポイントは、商品の集荷から配達まで、途切れることなく低温を保つノウハウと気配りにある

 保冷技術が進歩し、そしてそれを冷たいまま届ける努力があるからこそ、高品質な商品が消費者に届く。鮮度維持のための温度管理技術は、物流でも貫徹されている。技術・物流革新によって、産地直送のおいしい食品が食卓に増えるのは、一消費者としてうれしい限りである。

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提供:佐川急便株式会社
アイティメディア営業企画/制作:Business Media 誠 編集部/掲載内容有効期限:2009年6月26日