コラム
» 2009年05月25日 07時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本経済はズブズブと沈む? その原因は自民党の“慣れ”

さいたま市長選で民主党埼玉県連が支持した清水氏が当選した。この選挙は民主党が鳩山代表に交代して初めての選挙なので、政権交代を掲げる民主党にとって追い風になるかもしれない。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 さいたま市長選で民主党埼玉県連が支持した前県議の清水勇人氏が当選した。自民党・公明党が支持した現職の相川宗一市長を破っての勝利だけに、来るべき総選挙への影響は決して小さくはない。

 投票率も高かった。前回は35.5%だったが、今回は42.8%。自民党選挙対策委員長の古賀誠衆議院議員がいみじくも言ったように、「我が党は投票率はあまり高くない方がいいのではないか」ということが実証された形である。以前、森喜朗元首相が「有権者は寝ててくれた方がいい」と、同じような発言をしたことがある。

 そもそも自民党は、体質的に都市の浮動票の取り込みは上手ではない。その層には、もっとも利益供与がしにくいからだ。普通なら減税が政策的には効くはずだが、今の日本には減税をするような余裕はない。

現在の日本の問題は「慣れ」が原因

 このさいたま市長選は民主党が鳩山由紀夫代表に交代して初めての大きな選挙だから、政権交代を掲げる民主党にとって追い風になることは間違いない。

 政権交代が現実味を増してきた2006年の参議院選挙以来、自民党がよく口にするのが「政権担当能力」という言葉だ。最近も麻生首相はしきりに「政権担当能力があるのは我が自民党である」と強調している。

 確かに「慣れている」という意味ではその通りかもしれない。しかし現在の日本の問題は、むしろその「慣れ」が原因であることの方が多いという事実を忘れてはなるまい。

 日本銀行の白川総裁は、「日本経済に下げ止まりの兆候が見られる」と語った。ここ2四半期続いてきたようなまるでフリーフォールのような最悪期は脱したということである。しかしなぜ「金融危機の傷は浅く、金融機関は健全」(与謝野財務相)という日本が先進国中最悪の経済縮小を経験しているのか。

 ドイツも同じだが、経済が内需主導型ではなく輸出依存になっていたためだ。2002年度以降、輸出は2007年度までほぼ10%前後の高い伸び率で推移し、それに伴って民間企業の設備投資も高成長を続けてきた。これが日本経済を牽引してきたのである。その輸出がこけ、民間企業も設備投資を大幅に減額しているのだから、経済が急激に縮小するのは当たり前なのである。

 簡単に言ってしまえば、バブルが崩壊してから日本経済の構造改革が必要だったのに、結局のところ改革をほとんどしないままに来てしまった。ここで言う「改革」とは、ここ数十年言われている「内需主導型経済」への転換である。

 典型的には自動車産業の内需を見れば実感できる。自動車の販売台数はピークが1990年の780万台。しかし現在はせいぜい500万台程度である。もしこれから日本の景気がかなりよくなっても、自動車の販売台数が過去のピークを超える可能性はまずない。現在の日本の景気後退は、循環的な景気後退というだけではなく、構造的な景気後退でもあるということだ。

自民党に「政権担当能力」はあるのか?

 その最大の構造的要因は、人口構成の変化と人口減少である。日本経済で何かと「傾向」をつくってきたのは団塊の世代。この世代は今、引退しつつある。引退すれば消費は減る。もちろん退職金をもらって海外旅行というような人々もいるだろうが、子どもたちが独立していけば親たちの支出はほぼ自動的に少なくなるのである。この最大の消費グループが消費の第一線からも「引退」するということのインパクトは決して小さくない。

 このインパクトを吸収して日本経済を立て直すには、少なくとも今までの経験値はほとんど役に立たないと言ってもいい。つまりは「慣れ」を打破しないことには、日本経済はズブズブと沈没するばかりなのだ。

 では、どのように打破すればいいのか。その答えを確信をもって言える人は“誰もいないのだろう”と思う。今までの延長線上ではないことを過去の事実に基づいて推測することはほとんど意味をなさない。世界で最も速いスピードで高齢化し、しかも人口が減少しつつある国がどうなるか世界中が注目している国が、まさに日本なのだ。

 そんな国で、戦後、ほとんどの期間、政権を担当してきた自民党に「政権担当能力」があると言われても、まったく説得力に欠けると思う。政権担当能力ではなく、これからの日本をどうするのか、どういう改革が必要で、そのための痛みを国民にどう説明するのか。そのビジョンを示すことが、自民党にとっても民主党にとっても国民に対する責務である。

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