著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)
有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。
鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(49)は、市のWebサイトに2007年度当時の市長、教育長ら幹部を含む職員計268人の年収、諸手当などの明細を1円単位で公開した。
この名物市長のやり口に対し、諸手を挙げて賛成はできない。しかし公開された数字を見てみると、その強引な手法も、いたしかたなしと思わせる部分がある。これが、財政が苦しいと言われている土地の地方公務員の給料明細である。ためになるので、一度、ご覧いただきたい。
鹿児島県阿久根市は小さな市だ。あの市町村合併でも、周辺市町村から毛嫌いされたほどの財政状況にある。阿久根市の人口は2万4356人。そこに市職員は総勢268人働いていて、その半数以上が年収700万円を超える高給取りであるというわけだ。若い公務員の給料は安いと聞くので、これは地方公務員全体の高齢化のなせる技とも言えそうだ。
小さな市だから、大きな法人もない。市のWebサイトによると、年間の税収は約20億円。それに対して、総勢268人の市職員の人件費は17億3000万円。税収の9割近くが職員の人件費で占められているのだ。「職責や能力と給料の関係もデタラメとしか言いようがない」と市長が言うのも一理ある。
下記は、ある職員の明細である。
給料 384万900円
扶養手当 39万0000円
住居手当 26万4000円
通勤手当 7万8000円
時間外 78万5535円
休日 10万4711円
児童手当 24万0000円
期末手当 115万0530円
勤勉手当 55万8007円
総額 741万1683円
400万円に満たない給料に、300万円以上の手厚い手当てが付いている。通勤手当や児童手当は理解できるとして、期末手当や勤勉手当ってナニ? どうやら民間で言うところのボーナスらしい。勤勉手当という項目にして分かりにくくしているようだが、財務状況が赤字の行政に「ボーナスなんていらない」というのが市民感情だろう。
こうして給与明細を公開することは、公務員バッシングの好材料になる。1つのガス抜きだし、選挙を戦うためには分かりやすい論点でもある。しかし、阿久根市の地方公務員の給与明細公開ニュースを、そんなガス抜きや選挙対策に終わらせていいのだろうか。
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