コラム
» 2009年05月20日 07時00分 UPDATE

北米市場を制覇するKUMON――「一人勝ち」の仕組み (1/2)

北米生徒数目下25万人。300万人への拡張も夢ではないといわれる教育系フランチャイズの雄、KUMON(公文)。競合他社の追随を許さないその強さの秘密に迫った。

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」がある。


ah_kumo.jpg 日本公文教育研究会

 日本が世界に誇る教育ビジネスとは何か?

 それは「KUMON(公文)」です。北米に25万人の生徒数を誇り、「教育系フランチャイズ」としては「押しも押されもせぬ」王者の座に君臨しています。「フランチャイズで食品といえばマクドナルド、教育といえばKUMON」と言われるくらい、北米においてもそのブランドは浸透しているのです。

 KUMONはなぜここまで強いのか? その答えは「顧客を知り尽くした上での事業設計」にあるように思います。

1.ターゲット顧客の明確な定義

2.「顧客を知り尽くす」ことの徹底

3.「顧客ニーズ」に基づいた事業設計

の3つのステップを抜け目なく遂行していることが、KUMONの強さの根源だと思います。

KUMONの2つの顧客

 フランチャイズ・ビジネスで「顧客」といえば、2通りの顧客を指します。1つは、サービスの利用を通してメリットを享受する「最終顧客」。そしてもう1つは「フランチャイジー(加盟店)」です。

 「最終顧客」は誰なのか。本家である日本の公文は「生涯教育」をうたい、子どもから大人まで幅広い事業展開を行っているようですが、北米KUMONは対象を3歳から高校生までの子どもに絞っています。そしてさらに、その年齢層の中でもある特定のグループに照準を合わせているのです。

 その特定のグループとは「アジア系移民または移民の子ども」です。アジア系米国人の人口規模は、今日1200万人程度と言われています。北米KUMONはアジア系移民の教育に対する高い関心と、「我が子に最高の教育と、将来に向けての最高のチャンスを与えたい」と願う切なる親心に訴えるビジネスなのです。

 さらにKUMONのすごいところは、この「最終顧客ターゲット」をベースに、もう1つの顧客である「フランチャイジー」のターゲットを定めたことです。

 アジア系移民は中国人ならチャイナ・タウン、インド人ならインド人街というように、自分と同種の人々が集まる地域に居住する傾向にあります。また、スーパーや美容院など、ひいきにするビジネスも、自分と母国を同じくする人々が営んでいるお店を好んで利用することが多いと言えます。これは、教育ビジネスも例外ではありません。米国の社会学者、ジョン・ナイスビットが提唱した「グローバル化が進めば進むほど、人間は部族(トライバル)化する」というコンセプトです。

 「顧客として、移民の子供をひきつけるためにはどうしたらいいか?」

 これを出発点として、KUMONでは「移民に焦点を定めて、フランチャイジーを開拓しよう!」という考えに至ったようです。

ah_kumokai.jpg 公文の海外向けWebサイト

 では、移民をフランチャイジーとしてリクルートするにはどうしたらいいか。

 考えた末に北米KUMONでは、手頃な初期投資と、「お金」より「資格」「適性」を問う選抜システム、手の行き届いたトレーニング・プログラムに基づくフランチャイズの仕組みを打ちたてました。

 例えば、手頃な初期投資。これがどのくらい手頃かというと、他の教育系フランチャイズ・ビジネスと比較してみると分かりやすいと思います。

 米国に、「シルバン・ラーニング・センター」というフランチャイズがあります。KUMONと同じく、算数と読み書きを中心としたチュータリング(個別指導)を提供しているフランチャイズですが、シルバンの場合、初期投資の推定額は18万ドルから30万ドルの間だと言われています。これがKUMONの場合、1万ドルから3万ドル。なんと10分の1の投資で起業できてしまうというのです。

 昨今、どの業界でも、独立/個人経営のビジネスが大手に対抗して、生き延びていくことは年々困難になってきています。そういった現状の中で、フランチャイズ・ビジネスという仕組みが、個人が独立、起業する上で勝算の高い方法としてますます注目を浴びてきています。その人気を受けてフランチャイズ・ビジネスの初期投資額も上昇傾向にあるようです。最近私もフランチャイズ関連の見本市に参加する機会がありましたが、初期投資額が20万ドルから50万ドルというのは当たり前になってきています。そこへきて、KUMONの1万ドルから3万ドルという初期投資額は、フランチャイズ・ビジネスを検討している人にとっては破格です。

 また、KUMONでは「資格」と「適性」に重きをおいた厳格な選抜システムを設けて、やる気のある質の良いフランチャイジーの獲得に注力しています。さらに、営業開始前のトレーニング・プログラム、そして継続的なスキルアップのためのトレーニング・プログラムを設けて、フランチャイジーのサポートにも努めています。KUMONのフランチャイジー候補は、厳重な身元調査をクリアした後に面接試験、筆記試験を受け、イリノイ州にあるトレーニング・センターで7日間のトレーニング、実技試験をパスしなくてはなりません。「お金さえあれば誰でもなれる」というわけではないのです。

 もとより、KUMONのフランチャイジーになるためには、四年制大学の学士号をもっていることが条件になっていますが、KUMONのフランチャイジーの多くが、教員免許の保持者や、エンジニア(フランチャイジーの10%がエンジニア出身)であることも、この厳格な選抜システムに起因しているのかもしれません。

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