メイド喫茶の内側は? 現役メイド「あいりちゃん」に聞く(前編)現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(4/4 ページ)

» 2009年05月19日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]
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風営法とメイドのホスピタリティー

 前述のような経緯の中で、メイドに必要な能力は、ビジュアルに加え「最低限のコミュニケーションの中で常連をつかみ取る能力」あるいは「設定を演じきる能力」だそうである。

 なぜ「最低限のコミュニケーション」しか取れないのか。これを知るために、風営法とメイド喫茶の関わりを少しだけ見てみよう。

 メイド喫茶は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)における風俗営業店の認定は受けていないので、接待業務と見なされる行為はできない。イマイチ、風営法の認定を受けると何がマズいのか筆者には分からなかったが、外部からの介入を警戒しているのだろう。

 同法は、接待業務について、これまた法律らしい抽象的な表現を行っているのだが、基本的には「一対一で長時間話すとNG。これに関してはどの店も徹底している」とのことである。

 そういったわけで、“お給仕”の動作の中にいかに会話を入れていくか(「旦那様はお仕事の帰りですか? そうなんですか、楽しんでいってください」程度でいいらしい)、その中でいかに設定を演じきるかがメイドの力量につながるようだ。

 こういった規制の中でも、新規の顧客が少ない中においては、リピーターとなる常連客の確保が必須である(現在の平日利用者の9割は常連客だそうである)。ポイントカードの発行による常連に対する付加価値の付与(通い詰めるとメイドと交換日記ができたり、ランクの高い料理が出てきたりするらしい)や、コンセプトカフェのようなニッチへのアプローチにより、店側がシステマティックに行っている方策もあるが、何より重要なのはメイドによる囲い込みである。

 ここからは、あいりちゃんの言葉を借りて、メイドのホスピタリティーについて説明しよう。

 「私たちはキャバ嬢のようにトークで旦那様の心をつかむことも、なかなかできないわけじゃない? だから、私たちは“2.5次元”として、旦那様にお店の雰囲気を楽しんでもらうために、お店での設定を演じきる。その中で、私個人ではなくて、“あいり”というキャラクターを好きになってもらうことが重要。だから、どのお店も基本的にはメアド交換もプライベートで会うことも禁止だし……たまに紙ナプキンにメアドとかを書いて渡してくれる旦那様がいて、1回だけそれがきっかけで付き合ったこともあるけど、『想像したのと違う』といってすぐにフラれちゃったし……旦那様が好きになったのは、あいりというキャラクターであって、私自身ではなかったってことだよね」

 これはこれで、大変そうな仕事である。

メイド喫茶に求めるべきモノ、求めてはいけないモノ

 個人的には、メイドもキャバ嬢のように固定客を捕まえるために何かものすごいテクニックを持っているのかと思っていたから、インタビューをして肩すかしだった面もある。だが、メイド喫茶はあくまでディズニーランドのように非日常を作る側(メイド)と非日常を楽しむ側(ご主人様)の、1つの演劇的あるいは刹那的な世界であるようだ。

 あくまでそういった世界観を愛(め)でるのがメイド喫茶であって、筆者のようなメディアで話題になっているから行ってみようという人は深入りしても大して楽しめそうにはない。残念である。

 とまあ、ここでこの話は終わらせても良いのだが、メイド喫茶の収益構造や資本関係、このようなマニアックな世界を大衆化した@ほぉ〜むcafeの戦略、そしてメイド側への安い給与を埋めるためのインセンティブなど、よりビジネスライクなお話を残しているので、「後編に続く」ということで今週は終わりにしよう。

 「なぜ、アキバの駅前でビラを配っているメイドは、あまりカワイくないのか?」が、よく分かる後編になるだろう。

 →後編はこちら

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