新聞は一度、バカと言われる側に回ってみてはどうだろうか?(2/2 ページ)

» 2009年05月18日 15時51分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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「腐っても新聞」というプライド

 2009年2月に「ネット通販での医薬品販売規制強化」のニュースが、世間を賑わしたのを覚えている方も多いと思う。厚生労働省は、リスクの低い医薬品の販売のみに限定した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」を2月6日に公布。今年の6月からは、ビタミン剤や消化整腸剤など一部の薬品を除いて、ネットや通販では医薬品が買えなくなることに対して、ネット販売業者や通販業者から異論が出ているという内容のものなのだ。

 どう贔屓目(ひいきめ)に見ても、新聞の報道はネット販売業者の方を悪として捉えている。この問題の対立の構図はきわめて明解で、薬局店や薬剤師の団体が厚労省に圧力をかけてネット・通販への規制をさせたもの。医師会だの看護協会だの薬剤師会といった団体は自民党を支援しており、自民党政府としては彼らが有力な票田なので要求は無視できない。よって、自民党よりの新聞は、「ネット=悪」の側にまわす。ネット購入したクスリで異常が出たなどの小さな告発記事を、このタイミングに流すことに躍起になる。

 読売オンラインに掲載されている『楽天・三木谷氏「結論ありきでは」』というニュースでは、以下のように書かれている。

 「一方、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかりさんは『障害を持つ方は本来、薬のリスクが高いはずで、医療機関で専門家と接点を持って購入するのが望ましいのではないか。ネットで買うことの危うさも知ってほしい』と話した。」

 と、書かれている。記事の構成と内容に、厚生労働省寄りの意図が働いているのは隠しきれていない。

 私ごとであるが、2007年の末、某新聞社が新聞の朝刊に折り込む地域密着のフリーペーパーのようなものを発行したいというので相談に乗ったことがある。会議に行ったら、そのフリーペーパー発行の責任者は、団塊世代の元編集員。どんな内容にしたいのか、その意図はあるのかと聞くと「今はフリーペーパーが盛り上がっているから新聞社も、そういうものをしなくちゃいけないようだから」という。そう言ってる割にはその会議に、地元で発行されているフリーペーパーを持って来ている者すらいない。誰も、地元の競合フリーペーパーをベンチマークしていない。危機感ゼロ。残念な気持ちになった経験がある。

 その会議で感じたのは、新聞社の方々の「フリーペーパー」や「インターネット」に対する蔑視である。そこで繰り広げられている情報のやりとりへの、嫌悪感である。「腐っても新聞」という、プライドである。地方ほどこういう傾向は強いかもしれない。

バカだと思われている側

 メディアが貴重な時代で、みんなが同じように見ていた新聞やテレビには、憧れがあったし、その主張はほぼ額面どおり受け取られていた。どんなことでも、新聞で書けばオーソライズされていた。また、オーソライズされたいとも思っていた。それが、マス媒体の想定していた大衆だ。

 しかし、ネットの出現によって個人が自由に情報発信できるようになった。従順なマスも、少なくなっただろう。

 うちの娘達は、よく姉妹喧嘩(けんか)をする。喧嘩の最後はお決まり。下の娘が「バカっていう方が、ほんとのバカなんだからね」と決まり文句を吐いて、泣く。

 そうなのだ、バカと言った方が、バカなのだ。「バカと言われる側」「バカだと思われている側」の方が、「バカ」に一番、敏感なのだ。

 インターネットの出現は、「一番てっぺんのバカ」を炙(あぶ)り出す役割を担っている。「一番てっぺんのバカ」にならないためには、どうすればいいのか? 一度「バカと言われる側」「バカだと思われている側」にまわることである。新聞やテレビにそれが可能か……はなはだ疑問だけど、期待している。(中村修治)

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