コンビニがほかの小売業とは違う理由――数字で見る3つの特徴(1/2 ページ)

» 2009年05月15日 07時00分 公開
[笠井清志,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:笠井清志

船井総合研究所シニアコンサルタント。複数企業でキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)で連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。


 日本全国にお店があり、日本人の生活に密着しているコンビニエンスストア(コンビニ)は約30年間かけて大きく成長しました。

 最新の商業統計(2007年度版)だと、コンビニの市場規模(年間売上高)は約6兆9000億円。店舗数も約4万3000店あります。デパートの市場規模が約7兆6000億円なので、コンビニの市場規模の大きさがよく分かります。

 30年前に日本にコンビニというビジネスモデルが上陸した後、いつの間にやら本家の米国のビジネスモデルからドンドン進化していきました。小商圏(半径約800メートル)の需要を満たすお店作りを行うため、最初は生鮮品を扱わないミニスーパーとしての位置付けでした。

 ところが、「おにぎり」を取り扱ってみたり、「弁当」を取り扱ってみたりとイロイロな試行錯誤を繰り返しながら業態は進化を続けていきました。コンビニの進化の歴史は「お客さまニーズへの対応」「変化対応」の歴史でもあるのです。

 コンビニのすごさは変化対応をし続けてきている点にあります。店舗の近隣住民のニーズの変化に対応し続けてきたために、ここまで大きくなった業態なのです。

 コンビニビジネスの基本とも言える、業態特徴を3点にまとめてみましょう。

1.固定客が80%

2.店内での平均滞在時間は5分以内が80%

3.驚異の坪当たり売上高(生産性)

固定客が80%

 固定客とは週に1回以上コンビニに行くお客さまのことをカウントしています。コンビニ1店舗当たりの平均客数は約900人です。このお客さまの約80%は、週1回以上コンビニに行っていることになります。

 コンビニは小商圏で成り立つ業態です。ここでの小商圏とは徒歩で10分圏内、「徒歩1分=80メートル」なので店舗を中心に半径約800メートルの円内の住民がコンビニの対象客となります。徒歩10分以内で行ける場所にコンビニがあるので、近隣住民はチョコチョコとコンビニに行くことになるのです。

 また、コンビニで取り扱っている商品構成も影響しています。変化対応を続けてきたコンビニの売り上げの中心は、過去は「酒」「たばこ」「雑誌」「加工食品」でしたが、近年は「おにぎり」「弁当」「冷たい麺」といった食品(中食)となってきました。

 これから示すデータは公開情報ではなく、私が過去から現在まで個人的にお手伝いをしているコンビニの数値ですが、中食の売上構成比平均は約50.3%でした。コンビニ1店舗あたり平均年商が約1億6000万円であるため、実に約8000万円が1店舗当たりの中食年間売上となっている計算になります。

 中食とは家の中で食べる食品なので、購入頻度も高くなるものです。独身男性であれば、ほぼ毎日コンビニで夕食を購入している人もいるのではないでしょうか。このように、コンビニは「家の近くにあり、購入頻度が高い食べ物を買う場所」となっているため、固定客が多いのです。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.