あなたもお金が借りられなくなる? 法律が招いた“優しいヤミ金”(1/2 ページ)

» 2009年05月14日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「昨日までお金を貸してくれていたのにひどいじゃないか」――。2010年6月×日……消費者金融などからお金を借りていた消費者たちの不満が爆発するかもしれない。

 なぜ、ある日突然、お金を貸してくれない事態に陥るのだろうか。その背景には金融庁が2006年12月に公布した「改正貸金業法」があり、その中の1つに「総量規制」があるからだ。総量規制とは、貸金業者からの総借入残高が年収の3分の1を超える貸付を原則禁止とする制度。例えば年収300万円の人であれば100万円が限度となるほか、妻が専業主婦の場合、夫婦で100万円までしか借りることができなくなる。

 総量規制は2010年6月18日までに導入される見込みだが、そもそも改正貸金業法を知っている人はどのくらいいるのだろうか。日本貸金業協会の調べ※によると、改正貸金業法を「知っている」という一般消費者は20%ほど。一方、現在借入中の人は同40%。また現在借入中の人で「借入できる総額が年収の3分の1までになる」ことを知っているのは15.0%にとどまり、このままでは多くの人が「寝耳に水」になりかねないのだ。

※インターネットによる調査で、借入経験者3177人と一般消費者3329人が回答した。調査期間は2008年11月21日から12月2日。
現在借入中の人は改正貸金業法をどこまで認知しているのか? (出典:日本貸金業協会、クリックして拡大)

 改正貸金業法の認知率の低さには業界関係者も頭を痛めており、「消費者に告知をするといっても『これからお金を借りますか?』と聞くわけにはいかない。また総量規制の具体的な内容が決まっていないので、顧客にも十分に説明できない」という。

消費者金融からお金を借りられない人たち

 総量規制が導入されれば“お金を借りたくても借りられない”という人が増えそうだが、施行前の時点で“貸し渋り”が起きているようだ。日本貸金業協会が995社に対して行ったアンケートによると、2006年9月時点の総貸付残高は17兆4032億円だったが、2008年3月には15兆2176億円。総貸付件数も同2456万1000件から同2166万6000件と、いずれも右肩下がりで減少している。また改正貸金業法が公布される前の成約率は4割を超えていたが、2008年3月の時点では26.8%まで低迷している。

 また直近1年間で消費者金融から、希望通りの借入ができたという人は61.3%だった。残りの38.7%の人は融資を断られたり、希望額の借り入れができなかったようだ。先ほどの成約率は26.8%なのに、なぜ希望通り借りることができた人は61.8%もいるのか、と疑問に感じる人もいるだろう。希望通りに借りることができた、できないというのは、ある消費者金融に行って断られると次の会社に行って申し込む。そこで断れたら、また次の会社で申し込むといった“借り回り”した結果だ。「複数の消費者金融に申し込んでも、約4割の人は希望通りの借入ができていない。ここで問題なのは借入ができなかった人が、その後どういう行動をとったかということだろう」(日本貸金業協会)

 お金を借りることを断念した人で一番多い行動は「支出をあきらめた」(57.6%)だ。お金を借りるということは何らかの目的があったはずだが、それがギャンブルであったり、不要なブランド品の購入であれば、むしろ「お金を借りられなかった」方が消費者にとっては“親切”だったかもしれない。しかし教育費や医療費、家賃、税金など必要な資金をあきらめるということは、どのような結果を招くのだろうか。

 具体的な借入目的までは分からないが、借入額が不足した人の行動を見てみると「家族や親族から借りた」(28.2%)や「友人・知人から借りた」(12.8%)という人が多い。しかし最大の問題は「ヤミ金などの業者を探した」という人が7.7%もいることだ。

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